学生&卒業生インタビュー第13弾【ヨーロッパ文化学科→大学院に進学した 小林 紫乃さん】

2016年10月18日

夏休みも終わり、後期の授業が始まりました。皆さん、お休みモードからの切り替えはできましたでしょうか。
さて、一昨年武蔵大学を卒業された先輩方は社会人2年目を迎えました。就職された先輩、大学院に進まれた先輩。それぞれ新天地でどのような1年を過ごされたのでしょう。第11弾の特集では、一般企業に就職された宮崎さんにインタビューをしました。 今回は大学院に進学された卒業生の方にお話を伺います。

 

 

小林 紫乃(こばやし しの)

武蔵大学大学院人文科学研究科欧米文化専攻 博士前期課程2年

2015年 武蔵大学 ヨーロッパ文化学科 卒業  
現在、大学院2年目で、ヴェネチアの仮面文化について研究している。
~留学・語学経験~
大学2年の夏に、武蔵大学の海外協定校であるフランスのトゥーレーヌ学院へ1か月留学した。 高校時代からフランス語を学び、実用フランス語技能検定3級の資格を持ち、大学ではフランス語以外にも、積極的にイタリア語やラテン語、ギリシャ語の授業を受け、勉強した。


◆大学時代について

 

――大学時代に履修していたゼミについて教えてください。

 

ゼミは選択制で毎年違いました。1年生の時は基礎ゼミで、自分で本を読んで発表することがメインでした。基礎ゼミの先生は選べないのですが、私はたまたまフランス文学の良い先生に出会えて、レポートの書き方、発表の仕方、文学の読み方を1から教わって、それが本当に役に立ったので、4年生の卒論ゼミもその先生にお願いしました。2,3年生のゼミは文学を読んでみんなで話し合うことがしたくて、そういうディスカッションができるゼミを選びました。

 

――大学4年間の中で特に印象的だったことはありますか。

 

やっぱりゼミがためになったと思います。私は結構、自分の中に固定概念があって、たとえば今話題になっているLGBT(※1)のこととか、同性愛について、少し抵抗がありました。しかし、ゼミでディスカッションをすることで全く違う視点からの意見を聴くことができました。「そういう目線があるんだ!」という、なんとなく自分だけが正しいと思っていた道が、実はそうではなくて、人それぞれの道があるというのを知ることができました。

 

(※1)LGBT…女性同姓愛者(Lesbian)、男性同性愛者(Gay)、両性愛者(Bisexual)、性同一性障害を含む性別越境者など(Transgender)の人々を意味する頭字語。

 

――卒論についてはどんなことを研究されたのですか。

 

18世紀のカリブ海の海賊が好きなので、海賊にしました(笑)

 

――海賊が好き、というのは何かきっかけがあったのですか。

 

最初は女の子が憧れるように、ディズニー映画のプリンセスが大好きで、それに影響されて歴史や煌びやかで可愛いヨーロッパ文化が好きになりました。逆に海賊は怖いし、人を殺すし、本当に意味がわからないと思っていたのですが(笑)『パイレーツオブカリビアン』という映画を見て、何回か見るうちに海賊が存在する意義を考えるようになりました。高校時代に『海賊大全』という本を読み、「おもしろい!すごい人たちだ!!」と思ったのです。海賊はイギリス出身が多いのですが、権力者たちに虐げられた下層階級の人々が、新世界といわれるカリブ海に自由を求めて船出したということを知って、「なんてロマンがある人達だ!格好いい!」と惚れてしまったんです(笑)海賊は決して悪い人たちの集まりとは限らないんだということを、ちゃんとした文章にして知らしめたい、と高校のころから考えていたので、卒論のテーマにしました。

 


◆大学院進学のきっかけ

 

――では、大学院に興味を持った時期はいつ頃だったのですか。

 

大学3年の冬でした。

 

――けっこう遅いですよね。

 

そうなんです。3年生の秋くらいまでは普通に就職するつもりでした。企業説明会も始まっていて、私も参加していました。私はヨーロッパ文化に関連する職に絶対就きたいと考えていたのですが、先輩の就職先を見ても銀行など、直接ヨーロッパ文化とは関係がないところに就職された方が多かったんです。そんな時に、3年の後期のゼミの先生に大学院ってこういうところだよという話を聞きました。私は将来的にヨーロッパに住むか長期留学したいと考えていたので、大学院に進学して、休学という形で留学に行けば戻ってきた時も学生という身分でいられるなど、学生という融通の利く身分のメリットをたくさん聞いて、「大学院っていいな」と思いました。

 

――その時期から院に行くために、どんなことをされましたか。

 

私は出願資格を満たしていたので、武蔵大学在学生対象の大学院進学奨励学生制度を利用しました。この制度を利用すると、学部4年生の時に大学院の授業を受け、一定の条件(成績)を満たせば筆記試験が免除されます。もちろん、その単位は大学院の単位として加算されるので、積極的に活用しました。

 

――まわりが就職活動をしている中で違う道を選んだことへの、悩みなどはありませんでしたか。

 

あまりなかったですね。そのころ『就活狂想曲』というアニメーション動画が出回っていて、そこで風刺されている就活独特の風土が本当に嫌だったんです。ちょうどそのころ、ヘルマン・ヘッセの『車輪の下』という本をゼミで読んでいて、決められたレールから外れた主人公が結局死んでしまう内容なのですが、主人公に同調してレールに乗ったままの人生も嫌だ、という意識が強くなったことも、理由の一つかも知れません。

 

――武蔵大学と他の大学の大学院とで悩んだ事はありましたか。

 

私の研究テーマがヴェネツィアなので、ヴェネツィア大学と協定を結んでいる大学の大学院に行くのも良いかなと思っていたのですが、それだけの為に全く知らない先生の元で研究するよりも、やっぱり武蔵大学が良いと思って、大学院も武蔵にしました。最近、色んな研究会に参加していて思うのですが、他の大学と比べて、武蔵大学のヨーロッパ文化学科には本当に色んな先生がいて、ヨーロッパを広域に扱っている大学なんです。だからやりたいテーマを専門としている先生が自分の大学にいなくて、わざわざ武蔵大学の研究会に話を聞きにくる他大学の人達もいます。だから武蔵大学のヨーロッパ文化学科って、本当にすごいなと思いました。

 

 

◆大学院での研究

 

――大学院では、どのような研究をなさっているのですか。

 

18世紀のヴェネツィアの仮面文化です。古代ギリシャの頃から色んな人が仮面をつけており、儀式やお祭りなどの際につける事が多いのですが、18世紀のヴェネツィアは1年中お祭りのような雰囲気で、日常的に仮面をつける習慣があったんです。そんな中で、仮面をつけなくてはいけないという法令が出たり、それに反して突然、仮面をつけてはいけないという法令が出たりしていました。仮面が日常化している時代が18世紀のヴェネツィアで、その時代では仮面がどういう意味を持っているのかについて、論文に書こうと思っています。

 

――なぜ、その研究に興味を持ったのですか。

 

高校の頃2009年の秋にディズニーシーで、仮面舞踏会をテーマにしたショーやパレードを全部見たのですが、その雰囲気や18世紀の服の再現がすごいなと思ったのがきっかけです。もともとシンデレラが好きだったので、舞踏会も興味を持っていました。例えば舞踏会で自分の身分を隠して、人と出会える空間が生まれるということにすごく惹かれました。実は私、大学3年の秋に、舞踏会をテーマにした小説を書いて、アマゾンで電子化したんです。もともとその話は高校の時にディズニーのパレードを見てからずっと書いていました。大学2年の時にクリエイティブ・ライティング(※2)という授業を受けていて、最後の授業に自分で物語を書く事になったので、自分が今まで書いていた小説を全部手直しして、完成させたら、小説書けるなと思ってやってみたんです。私はもともと小説家になりたかったのですが、小説家になるには大きな賞を取らないとお金にならないし、賞を取ったとしても、その後生活できるかと言ったらそうとも限りません。でも反対に、60歳のおじいさんやお医者さんでも小説を書こうと思えば書けますよね。歴史の中のお話を書く事が好きなので、例えば18世紀のヴェネツィアを舞台にしたお話は、高校生の時から書いていましたが、実際に小説を書いてみて全然歴史を知らないなと思ったんです。私が書いたのはファンタジー小説なので何でも書く事ができますが、それだと内容がすごく薄いし、誰でも書けてしまいます。小説を書くにしても、ちゃんと厚みのある歴史を、この時代はこういう生活をしていたんだという事を踏まえて書きたいなと思ったんです。こういうきっかけもふまえて留学するならヴェネツィアがいいなと思っていたので、ヴェネツィアの18世紀の仮面文化にしました。

 

(※2)クリエイティブ・ライティング…総合科目の一つ。事前に個人個人で書いてきた文章を、授業中に学生同士で評価しあう。

 


◆大学院生の生活

 

――授業はどこで受けているのですか。

 

教授の研究室が多いです。たまに教室で授業を受けている人もいますが、大体みんな教授の研究室で受けています。

 

――大学院に進学して楽しいと思ったことはなんですか。

 

大学に入学してからずっと楽しいですが、自分の研究を突き詰められるって素晴らしいです。確かに本を読むのもフランス語とかイタリア語とか、様々な言語の本を読まなければいけないから大変だけれど、内容は自分が知りたいものですからね。知ることが楽しいと思うから、大学に入学してからはずっと楽しいですね。

 

――反対に大変だと思うことはなんですか。

 

18世紀のイタリア語は現代のイタリア語とは違うというか、辞書になかったり、変化していたり、時々ラテン語も入っていたりしています。また、仮面は昔からあるから、16世紀ではこういう使われ方をしていたけれど、18世紀ではこういう使われ方をしていましたという定義も論文に書かなければならない。そうすると16世紀とかそれ以前の文章も読まなければならないので、ラテン語が必要になることなどが大変です。ラテン語は難しいんですよね。

 

――TA(※3)はやっていますか。

 

やっています。去年の後期は3つの授業でやっていました。今年は今の所、1つの講義をやっています。今、1年を通して私がTAをやっているヨーロッパ文化学科の小山ブリジット先生は、しっかり出席してメモを取っていたら評価してくれる先生で、授業もおもしろいです。アニメーションをみて特徴を書くという内容の授業では、私が少し早めに教室に来てパソコンの操作をやっています。

 

(※3)TA…ティーチングアシスタントの略。大学などにおいて、担当教授の指示の元、学生が授業の運用支援や補助を行うこと。あるいはそれを行っている学生のこと。

 

――お休みは大学生とあまり変わりませんか。

 

そうですね。授業も同じような時間にあります。全然変わらないです。

 


◆将来に向けて

 

――大学院卒業後の進路はどのように考えていますか。

 

研究者の道を考えています。研究で食べていくには、学位を取得するほか、ヨーロッパの研究に携わる研究者になるには、留学しなければならないと言われています。1年間どこかに留学して語学力を上げ、言語も教えられるという条件を満たしてから、博士論文を書きます。さらに自分の著書が出せるようになってくると、教員を募集している大学に応募できるようになります。道のりは長いけれど今はそれを目指しています。

 

――小林さん、ありがとうございました!

 


大学を卒業して会社に就職するというのも1つの選択肢ですが、大学院に進学するという道もあるのだと、今回小林さんのお話をきいて改めて感じました。選択肢は1つではなく、1つでないからこそ自分に合った道を選んでいきたいですね。学問の研究というのはとても難しそうだと思いました。しかし同時に、1つの事を追求することや知識を豊かにしていくことは、とても素敵なことだとも感じました。大学の授業やゼミの活動の中で、自分がもっと追究していきたい分野やテーマが見つかるかもしれません。私達も様々なことを視野に入れながら、大学卒業後について考えていきたいです。

お忙しい中、貴重なお話をしてくださった小林さん、本当にありがとうございました!

 

 

(社会学部3年 浜野 中村 2年 細谷)

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