横断してみた。

2016年02月20日

 

「横断」という言葉を聞いて思い浮かぶものは何でしょうか。

 

「横断歩道」?「横断幕」?

 

いえいえ武蔵大生なら、当然『横断ゼミ』ですよね!

 

経済学部、人文学部、社会学部――武蔵大学の全学部が合同で行う唯一のゼミ、それが三学部横断型ゼミナール・プロジェクト(横断ゼミ)です。まさしく『ゼミの武蔵』を体現したような授業です。

横断ゼミにはさまざまなウワサがあります。「4単位もらえるらしい!」「でもめちゃめちゃ忙しい」「学習意欲の高い人ばかりが集まっていそう」…。実際どんなことをやってるか知らない方も多いはず。

今回の記事は履修した体験記です。

横断ゼミの仕組み

横断ゼミとは企業から与えられた課題を三学部合同のチームで取り組む課題解決型のゼミです。その課題とは、「担当企業のCSR報告書を大学生にも理解しやすいよう編集し作成すること」。企業の方も協力してくださり、調べたり、質問したりした事柄からCSR活動についてまとめ、自分たちで決めた視点をもって報告書を作成します。
1チームは約15人程度。期間は前学期もしくは後学期の半年間。初回の企業の方との顔合わせと中間発表、最終報告会、振り返りの授業は土曜日にあり、学生も社会人のようにスーツ姿で受講します。





※CSR……corporate social responsibilityの略称で、企業の社会的責任と訳される。企業が利益を追求するだけでなく、組織活動が社会へ与える影響に責任をもち、利害関係者からの要求に適切に応える自発的活動のこと。

学部ごとに行う『フェーズ1』



中間発表までの『フェーズ1』では学部ごとに分かれてそれぞれ活動します。私は社会学部で、課題は「CSRがどのようなものか調べる」こと。5人1組のチームでの活動が始まりました。

何をやるかということについて、先生は具体的な指示は出しません。すべて学生が考えます。チームリーダーの提案で、私たちはチームの目標を決めることにしました。

決まった目標は「互いの足りないところも指摘しあえるチームになる」ということ。全員がほぼはじめましての状態ですが、お互い遠慮してしまっては時間が足りなくなります。より良い中間発表を目指すためにも、妥協せず、時には反対意見でも言えるようなチームを目指すことになりました。

また、授業時間以外にも、毎日1限に授業がない学生は図書館のディスカッションスペースで自主的に集まって議論することになりました。このことで段々と、メンバーのキャラクターも分かり打ち解けていけました。

CSRについて一通り調べることは出来たものの、さらに先生から「自分たちの視点を持つように」というアドバイスを受けました。自分たちの伝えたいことは何だろう…と悩む日々が始まります。決まっても二転三転し、また1からやり直し!となることもありました。ギリギリの中でなんとか納得のいく発表が完成。前日と当日、猛練習を行い中間発表に挑みます。


中間発表では企業の方からいろいろと指摘を受けてしまうものの、私たちのチームには「ちゃんと自分たちで考えて工夫していたことはよかった。発表としてのクオリティは一番高かった。」とお褒めの言葉も頂きました。私としても、時間が足りなかったことは惜しまれますが頑張れたと思う点も多くありました。中間発表の後は社会学部チームで打ち上げにいき、メンバーとはすっかり仲良しになれました。


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いよいよ横断!『フェーズ2』



『フェーズ2』からついに最終報告会へ向けて三学部合同での活動が始まります。いままで5人だったチームのメンバーも16人に。司会等も決めて、電子黒板を用いてちょっとした会議のようです。

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各学部のチームリーダーたちを中心に進めていきましたが、他学部のことをよく知らずぎこちない雰囲気で、もどかしさも感じました。

限られた時間の中で焦りながら作業を進めていきますが、時には学部ごとに固まって意見の対立が起きてしまいました。先生方からも「報告書の軸や切り口について話し合いが足りていない」という厳しい指摘があり、私たちはもう一度始めから話し合うことに。「この企業は私たちからみてどんな企業なのか」「この企業のCSR活動に一貫してあるモノは何か」と話し合った結果、全員が納得する新しい軸がうまれました。

メンバーが毎授業後に書くことになっているSNS上の日記では「やっと話し合いらしい話し合いができた」「新たな軸が決まってからチームの雰囲気がすごく良くなったように感じた」と長く悩んだからこその解放感と、心機一転頑張ろうという心意気がみえました。私もこの授業の後は解りあえたという嬉しい気持ちでいっぱいでした。

16人という人数の多さは壁でもありましたが、団結した後は心強く、毎日1日中教室を借りて空いた時間はそこで作業するという日々でした。いつも誰かがそこにいるというのはまるで部室のようで、お互いが各々担当する仕事を行うオフィスのようでもありました。

大きく報告書班と発表班に分かれ、私は報告書班になりました。読みやすいデザイン、レイアウト、伝わりやすい順番………何度も読み直して、お菓子を食べながら(笑)、夜遅くまでメンバーと修正を続けました。報告書の製本がおわったときは感慨深い気持ちになりました。


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泣けるゼミ。最終報告会



最終報告会当日。午前中から集まり発表班の練習を見守ります。前日も何度も練習している姿を見ていたので発表もスライドもレベルが高く、安心してみていました。

一方、今までやってきた沢山の時間もすべて今日で終わってしまうのだと考えると寂しい気持ちにもなりました。 













企業の方からは、「本当に会社のことを良く調べて、考えて形にしてくれていた。『face to face :向き合う』という発表の軸は当社の企業案内などの資料に載っているキーワードではないのに、自分が普段意識していることと同じで嬉しかった。発表もレベルが高く良かった。」などのお言葉を頂きました。

その後各チームリーダーたちが一言づつコメントしたのですが、いままでの事を振り返って思わず涙ぐむ学生がたくさんいました。

リーダーたちがそろって「感謝」を口にしていたことが印象的です。「この横断ゼミをやるにあたってたくさんの人に支えてもらいました」「家族や、先生や、守衛さん、もちろんチームのメンバーも本当にありがとうございました」と周りへの感謝を忘れずにいるリーダーたちの姿に思わずハッとさせられました。メンバーたちの涙につられて、私もついつい涙腺が緩んでしまいました。

「泣けるゼミ」というのは武蔵大学の交通広告で使われた言葉です。正直大げさにも思えるキャッチコピーでしたが、そんなゼミが武蔵には本当にあるんです。辛い時期を乗り越えたからこそ味わえる感動を味わえました。

その後の懇談会では企業の方と他チームの学生とゆっくり話すことができました。

企業の方とお話した際、「達成感はありますが、その過程での反省や後悔は少しあります」ともらしたとき、「だからこそいいんじゃないですか。次はもっと頑張ろうと思える。仕事ってそういうものですよ」と言っていただけたことがとても胸に残りました。そんな社会人になりたいです。他にも仕事の話を沢山聞けたり、写真をたくさん撮ったり思い出深い一日でした。


 


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