ムサシのゼミのVRプロジェクト『ぶみゅー』ってなんだ⁉︎

さる2020年・第68回白雉祭、期間限定でネット上に出現していたヴァーチャル武蔵大学のことをご存知でしょうか。

まるっとまるごとモデリングされた江古田のキャンパス、そこに立ち並ぶのは〈マスク〉〈消毒〉〈ソーシャルディスタンス〉……おしゃれでユニークな、ピクトグラムの数々。

手がけたのは、武蔵大学人文学部のとあるゼミでした。なにやら楽しげ新しげ、でも名前だけは妙にかわいいプロジェクト『ぶみゅー』、独占取材です。



 

どうもはじめまして、さとうと申します。

はじめましてじゃないよという方、4,000字の旅行記の読破おつかれさまでした。そしてありがとうございます。誠に。
マジで御礼申し上げます。マジで。

 

さて……みなさん、『ぶみゅー』でございます。

 

ぶみゅー。

 

アクセントは「みゅ」。〈自由〉と同じ発音だそうです。

もしくは〈シチュー〉。……ダメだ、私の語彙までかわいくなっている

 

正しくは【VMMU】といい、【Virtual Museum at Musashi University】の頭文字になっています。

ヴァーチャルミュージアム———博物館ですね。

実際に見たよという方もいるかもしれません、実は、今年度の白雉祭にあわせて、なんと武蔵のキャンパス全体をヴァーチャル空間上に再現し、企画展をおこなっていたツワモノたちがいるのです。

人文学部英語英米文化学科・小森ゼミの皆さんがその人たちです。

〈ミュージアム〉を研究対象に活動している小森ゼミは、「じゃあ自分たちでミュージアムをやってみよう」と思い立ち、本当に実現させてしまった、ということなのです。第一回展示『コロナ時代のピクトグラム展』、私も拝見しまして、すごく面白かったです。

“会場”に使われたのは、〈cluster〉というバーチャルSNSサービス。PCと想像力さえあれば、誰でも「ワールド」を作成・公開することができる感じのやつです。アバターで「ワールド」に入場したら、他のプレイヤーとチャットしたり、オリジナルのゲームで遊んだりすることもできます。

あの名作アニメーション映画『サマーウォーズ』が思い出されます。懐かしいですね。

私も大好きです、ドイツの男の子。

 


会場入口・正門。中央のロボットパルタは私

 


飛び出し坊や的なシラキジくんが出迎える

 


キャンパス中にピクトグラムがひしめく

 


私の最推し。鼻部分の造形に言及しているのが乙

 

 

展示もさることながら、会場のヴァーチャルキャンパスがまたすごい。

(※以下、「リアルキャンパスに合計4回しか行ったことない奴」の感性でお送りします)

あっここ入学式するはずだった講堂!

 

守衛室的なやつ……見たぞこれ、健康診断で!

 

あ〜〜あの、なんかよくわかんねえ三角のやつ!!

 

 

 

あっ『ゴミ箱』…………(……………………)。

 

 

 

 

 

会期は先月11月に終了してしまっていますが、どうやらまた次なるアクションがありそうだぞと、私の勘が告げています。嘘です。メールで聞きました。

 

というわけで今回、きじキジは小森ゼミの皆さんにZoomで取材を敢行。【VMMU】プロジェクトの全容から『VRの可能性と未来』的な雰囲気のトークにまで及んだ、1時間超のロングインタビューです。


 

インタビューにご協力いただいたのは、小森ゼミより小森真樹先生松本智行さん岡本侑弥さん清水谷耀一さん本間啓靖さんの5名。(なお、本間さんは都合により参加が叶わず。でも、ありがとうございます)

小森先生(以下、小森):人文学部英語英米文化学科の教員をしてます、小森真樹です。このゼミを主宰しています。

松本さん(以下、松本):英語英米文化学科4年の松本智行です。ヴァーチャルキャンパス自体の制作と、あとは……広報とか、展示の制作をちょこっとやりました。

岡本さん(以下、岡本):英語英米文化学科3年の岡本侑弥です。帰国子女なので、まあ今度……第二弾? をつくるときには自分の英語力を活かして、貢献できたらなと思ってます。

清水谷さん(以下、清水谷):英語英米文化学科3年の清水谷耀一です! 自分は広報というか、SNSの活動……特にInstagramで宣伝をやってます。


写真左から松本さん小森先生メガネ(さとう)清水谷さん岡本さん

 

小森:ぼくのゼミは例年、基本的には〈ミュージアム〉の研究をするってことで主宰してるんですね。

今年はコロナがあって、世の中がすごく混乱している時期に授業が始まって。せっかくだからみんなにもコロナについていろいろ考えてほしくて、〈コロナ社会とミュージアム〉っていう授業テーマにした。

英語英米文化学科のゼミは前期も後期も一年間同じメンバーでやる、通年の授業みたいになってるんだけど。新年度、新しいゼミが始まるという段階でもあったし、まずは「コロナで授業が一ヶ月間無かったけど、どうだった?」とか「家にいて暇だったし(笑)、コロナの中で生まれたエンターテインメントとか、楽しんだりした?」みたいな話から入って。それを一発目の課題として、ちょっとみんなで発表しようか、という感じでゼミがスタートしたんですね。

 

———【VMMU】は、どういった成り立ちで生まれたプロジェクトなのでしょうか。

清水谷:前期の授業や夏休みを通じて〈ミュージアム〉についていろいろ自分たちで調べていたんです。

コロナ禍という状況の中で、いろいろなミュージアムがヴァーチャルやオンラインの取り組みに力を入れている、というのが、その中で大きな発見としてありました。

いま、新型コロナウイルスの影響から世界各地の博物館・美術館が、ヴァーチャルミュージアムを制作・公開しているのだそうです。日本でも、上野・国立科学博物館はすべての展示をネット上で誰でも閲覧できる『かはくVR』、また東京国立博物館は、あの名作アニメーション映画『時をかける少女』とのコラボ企画『バーチャルトーハク』を12月19日より、clusterにて有料公開しています(一部無料エリアも(私はチケット買いました))。

清水谷:夏休みの期間には、それぞれいくつか気になるミュージアムのコロナ対策……消毒とか、マスクとか、オンラインチケット(チケットが手渡しではなく、ネット上で表示できるか)とか、そういったことを具体的に調べました。

その中でも、おもしろいモノ、今のコロナの状況をよく表しているモノは何かな、と考えたときに「ピクトグラムは象徴的で、しかもわかりやすいんじゃないか」と。それで今回の企画『コロナ時代のピクトグラム展』が決まりました。

たとえば水族館だったら『この魚◯匹ぶん離れてください』みたいにソーシャルディスタンスを守ってもらったり、あとは今流行りの『鬼滅の刃』だとかアニメのキャラクターを使ってコロナ対策を呼びかけていたり。

スターバックスとかマクドナルドとか、企業のロゴが(パーツに分解されて)離れて描かれていることで、ソーシャルディスタンスを発信するという動きもありました。

それぞれのソーシャルディスタンス

【ソーシャルディスタンス】|美ら海だより – 沖縄美ら海水族館

感染リスク低減へ「距離をとって」、企業各社がロゴで呼びかけ|CNN.co.jp

松本: 1つのミュージアムに対して大体1時間くらい、結構ガッツリ調べてきて。それで気づいたことなどを話し合っていく中で、閉館・部分開館しているミュージアムの取り組みとしてやっぱりピクトグラムは特徴的だね、という話になっていきました。

だから、調査したことの全部を第一回で発表したというわけではないんです。リアルのミュージアムにも通じる特徴なんですが、手元に持っているコレクションを一度にすべて展示できるわけではなくて。

だから【VMMU】もまだ、……出し切ってないよ? みたいな(笑)


「まだ出し切ってないよ? みたいな(笑)」

小森:そのへんも踏まえてね、Museum(ミュージアム)という名前にしてるんだよね。学園祭のイベントの名前が「ミュージアム」っていうのはちょっと不自然な感じもするけど……、次は何が出てくるかな? って(笑)、『箱』みたいなイメージを込めてのネーミング。

 

———私も実際に第一回『コロナ時代のピクトグラム展』見させていただきました。展示物もすごくおもしろかったんですけど、何より「武蔵大学の再現度がすげえ」と思って(笑)

清水谷:……正直、ゼミのメンバーも制作には関わっていなかったので、本当に同じ感想でした(笑)

小森:ぼくも同じです(笑) まさかヴァーチャルキャンパスができちゃってるとは思ってなかったので、驚きましたね(笑)

そのヴァーチャルキャンパスを創り上げた張本人、松本さん。アイデアの種は、「一発目の課題」ですでに見つけていたそうで……、

松本:(「コロナならではのサービスを報告」という課題で)いろいろ調べている中で、ヴァーチャル空間上に渋谷の街を再現した『バーチャル渋谷』というのを見つけて。これちょっとおもしろいな、と思って、発表してみたんです。そのときのメンバーの反応も「おもしろい」という感じだったので、こういうの、なんかいいな、と感じていました。

『バーチャル渋谷』は、au 5Gと東京都渋谷区がつくった『もう1つの渋谷』です。【VMMU】と同じくcluster上で公開されていて、今年の渋谷ハロウィーン(YouTube)もここで開催されました。

松本:そのあとミュージアムの調査に移っていって、その中でさっき清水谷くんが言ったような、ヴァーチャルミュージアムの動きがあるっていうことがわかったので、「じゃあちょっと、ヴァーチャル武蔵大学つくってみるか」という感じで夏休み中につくった、という経緯があります。


8号館。松本さん「ノリというか、気分でつくりました」

松本:難しかったところとしてはやっぱり、再現する場所の「現地」になかなか行けなかったので、データが取れないっていうのがありましたね。

最初は、大学ウェブサイトに載っているイメージ画像などを拾って、簡単なモデルからつくりました。

「こういうのつくってるんですけど、画像持ってる人いませんか?」ってSNSで呼びかけたりもして、実際何人かの方が送ってくれたので、そういうのを基につくっていきましたね。

小森:そうなんだ。SNS上でやり取りしてたっていうのは知らなかったな。

———…………「画像から起こした」と聞いて、俄然すげえなって思いました(笑)

松本:ありがとうございます(笑)

やっぱりその…………、何だろうな、大学がアップしている画像とかだと、……『いい角度』からしか撮っていなかったり(笑)、というのがあって。

これ言っていいかわからないですけど、………教授研究棟とかって、正直あんまりキレイじゃないじゃないですか(笑)


みんなで爆笑したので、たぶん大丈夫です(たぶん)

松本:1号館の画像とかは結構あるんですけど、他の建物は……キャンパスの奥に行けば行くほどデータがなくて(笑)

小森:だから最後のほうまで教授研究棟とか、裏側ができてなかったのか。言ってくれたらぼくが撮ってきたのに!(笑)

岡本:汚い所まで(笑)

小森:そう、汚い所の隅々まで(笑)

夏休みの調査による大量のデータと、松本さんがヴァーチャル空間上に(ノリで)つくった江古田キャンパス。この二つが、たまたまそろったことで【VMMU】はスタートした、というわけです。
……なんか、「たまたま」の最果てみたいな状況ですね、
これ。

小森:授業で「バーチャル空間でいろいろやるみたいなのが、ちょうどいま話題になってる」みたいな話もしたね。Fortnite(フォートナイト)っていうゲームの中で音楽ライブがあったり、とか。ゼミの最初のほうで、そんな話があったのを思い出します。

岡本:せっかくゼミで一年通して同じメンバーでやってるので、何かできないかな、って考えているうちに白雉祭の時期がきて。

そのときにちょうど……東大、だったかな? オンラインのキャンパスで学園祭をやっているのがニュースで取り上げられていて、「これ自分たちもできるんじゃないか」って思い始めて。松本くん以外のメンバーもだんだん意識が高まっていきました。

 

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