学生&卒業生インタビュー第10弾

2016年01月22日

皆さんは映画をどれくらい観ますか?頻繁に映画館に足を運ばなくとも、レンタルDVDやテレビ放送で色々な映画を観る人は多いと思います。
しかし、その映画がどのようにつくられているか、映画監督という仕事はどのようなことをしているのか、詳しく知っている人は少ないのではないでしょうか。

記念すべき第10弾の今回は、そんな普段見ている映画がどのように作られているのか、映画監督はどのようなことを考えているのかについて、武蔵大学出身で映画監督となった山本透監督に、お話を伺いました。

 

山本 透(やまもと とおる)
1991年 武蔵大学 経済学部 経営学科 卒業
     ~テレビ制作会社の面接を経てフリーランスの助監督となり、映画監督への道を進む。(詳しくはインタビューにて)
2008年 長編映画初監督作『キズモモ。』公開。

2012年 大泉洋、麻生久美子主演のヒット作『グッモーエビアン!』公開。
2015年 藤原竜也主演「探検隊の栄光」公開。
2016年 1月30日(土)、風間俊介、つるの剛士出演『猫なんかよんでもこない。』公開。

 

監督という仕事

――まず、監督という仕事について教えてください。
そもそも、監督とは現場でどのような事をやるのですか?カチンコを鳴らしたりなどする山本監督1イメージがありますが…

それは助監督の仕事ですね。監督の仕事はだいたい4つの期間に分けられます。準備期間、撮影期間、仕上げの期間、そして宣伝公開期間です。
順に詳しく説明すると、準備期間はまず企画開発から始まります。原作物であれば映像化権をプロデューサーが取得し、企画の内容に適した脚本家やキャスティングを一緒に考えるのが最初のステップです。僕の場合は自分で脚本を書いているので、脚本を書いている間にプロデューサーが出資者を集め、配給元を決め、おおまかに出来上がった脚本に対して主要キャストが出演を決めた段階で企画の映画化が正式に決定。撮影に向けて本格的な準備を始めます。キャストが決まると撮影時期が見えてくるので、次はスタッフを集めます。撮影、照明、録音、美術、衣装、メイク等々、映画制作には多くのスタッフが関わります。プロデューサーからスタッフの提案をもらいますが、基本的には監督が人選します。スタッフが決まったら、どこでどのシーンの撮影をしていくか考えながらロケ場所を探します。「ロケハン」ってやつですね。これと平行してキャストの衣装合わせやメイク合わせをしていくのが、準備期間の主な仕事です。
撮影に入ると、監督はどんなアングルでそのシーンを撮っていくのか、「カット割り」をします。例えば引きと寄りの具合、移動車を使った動きのあるカット、クレーンを使ったカットなど撮影方法を決めるのがカット割りです。それをスタッフに伝達しつつ、役者にお芝居をつけるのも監督の仕事です。もちろん役者の演技に対してOK、NGを出すのも監督です。とにかく何でもかんでも決めなきゃいけない仕事なんですよ。衣装、メイク、美術、持ち道具に始まり、必要な書類なんかも全部監督が最終チェックをしてOKを出さなくてはいけません。
撮影が終わると編集作業などの、仕上げ期間に入ります。仕上げは撮影スタッフとは別の、仕上げに特化した人達と仕事をします。撮影した映像を作品にどう使っていくか決めるのも監督の仕事です。OKやNGだけでなく、もっと短く、もっと長く、このカットは使わないなどの指示を出します。カラコレ(カラーコレクション)と言って画調をそろえたり、CGがあるような映画だったらCGを作る作業もあるので、その確認や修正指示にもかなりの時間がかかります。
映像編集をしながら、平行して音の作業も始まります。まず作曲家を指名して、このシーンに曲を付けたいっていうのを監督が決めます。上がってきた曲に対して、楽器やテンポを変えたいとか、追加で指示をしていくのも監督の仕事です。さらに、音楽をあてるのとは別に「整音」という作業も平行して進められます。撮影現場で取られた音には色々ノイジーな物が混ざっているので、ノイズリダクションという作業でそれを抑えたり、撮影したカットごとに違う音のバランスを整えたりする作業がこれにあたります。調整した音楽や、整音済みの音に効果音もつけ、最終的に編集が終わった映像と全ての音を一本化していきます。
編集が終わると、最後は宣伝公開期間ですね。いろんなイベントに参加したり、トークショーをしたり、取材を受けたりして、公開日を迎えて舞台挨拶をするところまでが、監督の仕事です。

 

 

武蔵大学から映画監督になるまで

 

――山本監督は、テレビ制作会社出身という事なんですけども…

正確には出身じゃないんだけどね(笑)まあ…一瞬入りかけてすぐやめました。

 

山本監督2――それは大学を卒業してから会社に入って、この仕事に移られたのですか?

いやあ、そこら辺は全然いい話じゃないんで(笑)僕、本当にダメな学生だったので、ずっと軽音サークルの活動ばっかりの人間でした。音楽で飯食っていきたいなぁ、って思ってた時期もあったんですけど、みんな苦労してたのも知ってたし、ぶっちゃけ楽器下手だったし(笑)
元々映画を観るのは好きだったけど、別に撮ろうだなんて考えた事もなくて、就職活動をしていたら、たまたま、テレビの制作会社が募集をしていたんです。それで行ってみたらプロデューサーの人に「お前、監督やりたいのかプロデューサーやりたいのかどっちだ?」と聞かれて。どっちもそもそも何をする仕事かよくわからなかったんだけど、監督の方が面白そうだなと思って、監督って言ったら、今撮影している現場があるから明日から来いってことになったんです。
だから、もう、入社したとかじゃないんだよね。ほとんど手伝いに来いみたいな感じでした。そしたら、助監督の7番目っていう、一番下にくっつけられて、現場に出たら、なんだか面白くて。助監督って基本的に全員フリーなんですよ。監督もほぼフリーです。そういう事も初めて知って、あ、じゃあ、会社入る必要ないじゃんって、その現場の最中に会社は入らず、そのままフリーで始めたんです。だから、テレビ制作会社出身って言っちゃうと、違う気もするんだよね(笑)

 

ヒット作品『グッモーエビアン!』

 

――話は変わるのですが、『グッモーエビアン!』について教えてください。この映画はやっぱり、ご自身が音楽をやっていたという経験から、音楽映画を撮りたいっていう気持ちがあったんですか?

そうですね、あの映画の中に出てくるエピソードは、結構自分が学生の頃、軽音でやっていたことが多くて。よく、酔っぱらって寝ちゃった友達の顔に落書きしてたし…カエルにして放り出してみたりとか(笑)。基本的には自分が体験してきたことがたくさん詰まっていますね。
あの頃はもう父親になっていたので、子供がいる中で自分自身の体験をめいっぱい織り交ぜて、家族という関係を描いてみたかったんです。

 

――ちなみに原作は、音楽映画を撮りたいと思って探したのか、それとも、もともと原作を読んでやりたいと思ったのですか?

プロデューサーがこんな原作あるんだけど、って持ってきたのが最初です。原作を読むと分かるけど、映画とはかなり内容が違います。ただ、自分がやりたいように脚本を書いてもいいってことだったので、1回好き勝手書いて原作者に読んでもらいました。そうしたら、これはこれで違うけど、この『グッモーエビアン!』も見たいって言ってくれたので。

 

――キャスティングを考えるときは、どういう風に決めるのですか?

脚本を書いている時に、具体的に人物が脳内にあった方が書きやすいので、ある程度、当て書きみたいな感じで書いていくことの方が多いかな…もちろんその通りにならないことも多々ありますけどね。

 

※当て書き…あらかじめ役者を決めた上で脚本を書くこと

 

――例えば、大泉洋さん(作中のヤグ役)は僕自身(編集部嶋田)はファンなので、歌がうまいってことは知っていたんですけど、一般的にはあんまり歌のイメージがないとは思うんですよ。それで、大泉さんを起用したって言うのはどういった理由からなのかなって思ったんですけど…

大泉洋さんが演じた「ヤグ」って役は、天真爛漫というか、どれだけ傷ついても子供の頃と同じ顔で笑っている人であってほしかったし、何年も勝手気ままに旅をして帰ってきても憎めないキャラクターであってほしかったんです。他にも、今の世の中に対して、ある意味パンクというか、いつでも何処でも身一つで生きていける男であってほしいとか、自分の中のヤグ像が原作を通してかなり膨らんでたので、そういうことを全部できる人って考えたら、大泉さんがいいなと思って、是非にとオファーしました。

 

――ラストの楽器の演奏シーンに生音を使っていたのは、やはりこだわりがあるのですか?

そうですね。普通映画で音楽シーンを撮るときは、先に音だけを録って、その音を流しながら手を合わせていきます。ようするに弾いてるフリをしながら撮影するわけですが、今までの日本のバンド映画って、色んな意味で綺麗すぎる印象があって。ライブハウスで聞く音って、もっともっとざらついている感じの音だし、だから事前に録音した曲を実際のライブハウスでスピーカーから出して、それを再度録音して、みたいな、手間のかかるやり方をしてみたり、映画館で観るお客さんがライブハウスに来ているような空気感を作れないかと試行錯誤を繰り返しました。

 

 

自分の”ルーツ”を探すー山本監督のつくる映画とは

 

――監督というお仕事は、人間関係やコミュニケーションがとても大事だと思うんですけど、心がけていることなどはありますか?

監督の仕事は、最初から最後まで物事を決めて、伝えることに尽きます。最終的にお客さんに伝えるために、スタッフ・キャストに伝える。なので、どうやったら自分のやりたいことをより的確に伝えられるか、常に考えています。やっぱり受け売りじゃダメっていうか、自分が本当にいいって思っていないと、なかなか人には伝わりません。自分の真ん中から言葉を出していかないと人を説得したりはできないと思うんです。

結局、自分が最初にそれがいいと思ったのは何なのかってことを突き詰めていかないと人にその良さを伝えられないんですよね。そうすると、自分の価値観や人格のルーツは中学生高校生大学生の時期だったりするわけで。10代までの間に形成される価値観だったりとか、友達と何して遊んだ、親父に何を怒られた、初めて好きになった人のこととか、友達と喧嘩したこととか、人と死に別れた経験とか。大学時代はろくな学生じゃなかったけど、やっぱり大切だったと思います。当時の友人たちとはいまだに仲が良いので、素敵な人との出会いがあった大学時代だったなって思います。

 

――自分の好きなものを伝えるという点で、例えば、自分のやっていたバンドや、今回の映画の猫に繋がるんですか?

それだけではなくて、どんなネタで映画作りをするにしても、何か自分らしさ、作家性みたいなものを出さなければ僕がやる意味はないと思うんです。映画は年間邦画だけでも500とか600とかあるわけで、そんな数ある映画の中で、少しでも輝き方が違うなと感じてもらえるように、アプローチ・切り口・表現の仕方なんかで、その辺にはないものを出していきたい。そうやって映画を作り続けていくことで、自分のルーツや伝えたいことを、改めて見つめ直せているんじゃないかとも思います。
ショービジネスの世界は、基本的には時代を追っかけなくちゃいけないところはあると思うんですよ。それに逆らってたら仕事もなくなっちゃうんですけど、一方で不変的なものもあるはずですよね。常に一番新しいものに価値観を見いだすようなやり方をしていると、そこに自分がいる意味が見いだせないので、10年経とうが20年経とうが観れる映画を撮っていきたいです。

 

最後に

 

――今後監督としてどのような映画を撮りたいですか?

これまで8本くらいなんだかんだで映画を撮ってるんですけど、どれもハッピーエンドな話を目指してきたので、やっぱり映画山本監督3館を出てくる人がどれだけ楽しんで映画館を出れるかっていうことをテーマに置きたいです。実は、まだ1回も悪人を描いたことがなくて、このまま突き進められるなら、悪役の出ない、そしてハッピーエンドな映画を撮り続けたいなと思います。そうはいっても、殺人鬼の映画をやってくれって言われればやっちゃうかもしれないけど(笑)まあでも救いがないものは基本的には断るようにしています。
個人的な好みの問題ですけど。ホラー映画とか、僕はそういうのダメなんだよね、なんでお金払ってイヤな気持ちにさせられなきゃいけないの?みたいな気分になっちゃうんで(笑)
だからもう底抜けに、『探検隊の栄光』(山本透監督・藤原竜也主演)みたいに、バカじゃねえのっていうくらい、ハッピーに締めくくっちゃう、っていうことは、やれるならやり続けたいかな。自分の子供が、またその子供たちに代々見せていけるような、そういう意味で、色褪せない映画、幸せな気持ちで映画館を出れるような映画を作っていくことが目標です。

 

――学生に向けて今の監督の立場からメッセージをお願いします。

青くさいことをやったらいいと思います。年を取ると、自分が武蔵にいた頃と気持ちは変わらないけど社会的な立場は変わるし、父親になって家族を持ったりすると、そうそう羽目も外せなくなる。その時にしか出来ないことってきっとあるはずだから、一瞬、一瞬を大切にして欲しいなと思います。今、楽しいって思えることを探していかないと、楽しいばかりじゃない時期がいずれ来るかもしれないし、何かに立ち向かわなきゃいけない時に、自分の「根っこ」みたいなものとか「真ん中」みたいなものが膨らんでないと、どの世界に行っても苦労すると思うんだよね。
だから青くさく、自分の思うままに、行きたいところに行って、見たいものを見て、自分が心から感じることを沢山して欲しい。例えば、自分がセンセーショナルに感じた音楽とかって一生忘れなかったりするじゃないですか。そういうのってやっぱり学生の頃に得るものなので、今しか出来ないことを探してほしいですね

 

 ――山本監督、ありがとうございました。

 

皆さんが映画監督というミステリアスなお仕事の一部でも知る事ができたなら嬉しいです。
僕(編集部嶋田)はメディア社会学科生で授業や部活で映像制作を学んでいますが、実際に映像制作という仕事の現場で働いている人とはお会いした事も、お話した事もなくて、遠い存在だと思っていました。実際に今回インタビューしてみても、残念ながらその距離が近づいたとは全く思えず相変わらず雲の上の存在ですが(笑)、それは単なるミステリアスという距離から、山本監督のルーツ等を知った上での純粋な尊敬という距離になりました。
このインタビューの後、山本監督の計らいで、『猫なんかよんでもこない。』の試写会にお邪魔しました。感動屋な僕が言うとちょっと説得力に欠けてしまうような気がしますが(笑)上映中めっちゃ泣きました。20歳の男子大学生が。1人で。でも、ひかれてないかなー、と隣を見ると隣だけじゃなく、会場全体が一つになってぼろ泣きでした。だから男子のあなたも安心して、劇場でぼろ泣きしてください!

 

今回取材させていただいた山本監督の新しい作品『猫なんかよんでもこない。』が来週末の1月30日(土)に公開されます。(詳しくは→http://nekoyon-movie.com/

猫なんかよんでもこない。(1)猫なんかよんでもこない。(2)

また、昨年公開された作品、『探検隊の栄光』が2016年3月16日(水)にBluray・DVD発売されます。(詳しくは→http://tanken-movie.com/

探検隊の栄光

ぜひご覧ください。

[社会学部2年:嶋田,新井,社会学部1年:今野]

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