『ガラクタや ネバーランド』と『たぬきたん(奇譚)』
いまからお話することはAから聞いた話である。
2015年4月―。
新入生が武蔵大学の敷地をまたぎ、その多くが学校の配置を覚えようと学校内を巡っていたと記憶しています。
その中の一人、私ことAの隣にいたとある学生(Bとでも言いましょう)が学生生活課の前にて一冊の冊子を手に入れました。
その名は「巡って楽しい江古田 EKODA MAP by nerimaga 第2弾」
ペラペラとページをめくっていたBの手はあるページで止まっていました。
ガラクタや ネバーランド
一際目を引いたその名前に、お店の紹介にBは何を思ったのか分かりません。
しかし、Bがそのお店に興味を惹かれたのは確かだと思います。
2015年9月―。
Bの口から再びその名を聞きました。今度は月刊小説「たぬきたん(奇譚)」の言葉とともに。
たぶんあの時、Bの気持ちは高ぶっていたのでしょう。Bは矢継ぎ早に私に言っていましたから。
「ガラクタや ネバーランドとたぬきたん。君には言っていなかったが、どちらにも興味を惹かれた自分がいる。
私はいつか取材しに行こうと思う。その時はぜひA、君もついて来てくれないか。」
2016年2月―。
Bはきっと温めていたのかもしれません。この予測はあくまで私の予想でしかありませんが。
Bから話を聞いていた私はきっとBの狙い通りの行動を起こすのでしょう。Bの誘いに刺激された私の好奇心によって。
随分話し込んでしまいましたね。でも、ここからが本題のお話です。
ガラクタや ネバーランド店主であり、月刊小説「たぬきたん(奇譚)」の著者である安藤さんから私とBが聞いたお話、ぜひ最後まで読んでいってください。
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ガラクタやっていうのは最初から決まっていて、ほんとに雑多なものを置きたかったので「ガラクタや」。
そのあと、つまらない大人にならないようにという自戒をこめて「ネバーランド」にしました。
25歳の時にもう好きなことをして生きようと決めていました。私は大学をやめてフリーターだったのであまりお金がなかったのですが、それでも何かお店がしたくて考えた結果、古物商にしました。 あとはお店のなかを見てもらえばわかるのですが、ものすごい色んな国籍と色んなジャンルの物を置いています。
私は多趣味で器用貧乏なのであんまりのめり込めないタイプなんです。だから、逆にそれをつきつめていったら多種多様なお店になると思いました。
古物の業界が行く競りみたいな古物市場で仕入れたり、買い取りもします。あと遺品整理っていったら大げさなんですけど、いま終活が流行っているので、お年を召した方から物を整理したいという連絡をもらうと、伺っていっぱい買い取ったりしています。
その中でもピンときたものだけをこのお店の中に集めました。
もう直感だけですね!
ブランドものでも私が気に入らなければお断りしますし、いいなと思えば買い取っています。
普通雑貨屋って品物が見やすいように置いてあると思うんですが、探すのが好きな人たちのお店にしたかったので、あえて見せないとか、奥の方に置くとか、ごちゃごちゃさせたりしています。
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月刊小説「たぬきたん(奇譚)」とは?
街の様子やお店・店主たちはノンフィクション!
ガラクタ出版(ガラクタや ネバーランド)の江古田が舞台の月刊小説。
【毎月発行・随所にて無料発行 *江古田地元情報WEBマガジン「えこだ島」でもご覧いただけます】
「たぬきたん」という題名は1話ができてからつけたので、やっぱりキーポイントは1話で出した狸さんです。
あと私、お話を書いたのはこれが初めてなんですけど、色々迷った時に色んな作家さんが一冊ぐらいはなんとか奇譚っていう話を書いていて、かっこいいなぁと思っていました。だから、「奇譚」っていう言葉をすごく使たいったんです。
ただこの2つを合わせちゃうと「たぬきたん」っていうちょっとなんか馬鹿みたいな発音になるので、くだけたというか、なんかちょっと抜けてる感じがちょっと面白いかなぁと思って「狸」と「奇譚」をかけて『たぬきたん』になりました。
ちなみに別にイントネーションに決まりはないです(笑)。
書きはじめたのは江古田市場※がなくなるっていう時で、皆かなり危機を感じていました。
「あ、変わるな江古田」って。
だから、結構お店同士でも色々言っていました。これからどうなるんだろうって。商店街の活動は年上の方たちのやりたい事と若い人たちのやりたい事が違っていて、意外と街づくりに壁があったので思うこともいっぱいありました。「たぬきたん」は思いを自由に書ける場として書き始めました。
※江古田市場とは、正式には「江古田市場通り商店会」といいます。練馬で一番「昭和」を思い出す商店街で、毎月「1日・15日・25日」が特売日です。特に生鮮品が充実していて地域と強く密着しています。(練馬区公式ホームページより)
だいたい登場人物のお散歩コースを考えています。
例えばほんとに、江古田の南と北までは歩いて行かないよなぁとか。 だから普段の生活で、まぁここをこう行くだろうなっていう距離を決めています。今回はあの道を取り上げてみようかなとか、今回は南口のあっちの方面に行ってみようかなとか。地図で考えてからお話を作っています。
お店の雰囲気はあんまり広告じゃ伝えられないなぁと思っています。なんか空気感、ちょっとあやしい店だったりとか、例えばあんまり味は評判悪いけどめっちゃ面白いおばちゃんがいるとか、広告とかではそういう店は特集されないじゃないですか。
だから何か付加価値があるのなら、そっちを掬いあげて端から書きたいと思ってます。ちょっと外ボロいとか、ある人にとっては欠点かもしれないですけどね(笑)。
だからよく「なんかたぬきたんは批判してから持ち上げるよね」とか言われるんですけど、それも愛のある批判でありたいなぁと思っています。
結構お店の店主と元から知り合いで、その人のことを小説に書く場合も多くあります。ほんとに皆さん自由に書いていいよっておっしゃってくれるので、お店の方の本名をだしたりとか、感じたままに書かせてもらえるのは、やっぱり私がお店をやってるならではだと思っています。 同業の目線でいろんなお店の方と喋れたり、情報交換したりとかね。
基本的に時間があったら、江古田のお店に飲みに行ったりご飯食べに行ったりしてお店の人に話を聞いています。
休日も、夜もだいたい江古田にいるから面白いところがあったらちょっとメモしたり。たまに酔っぱらった時の感覚で覚えているので、「あんなんだったっけ?」と思うこともあります。
だから、だいたい色んな場所を実際見て、インスピレーションが強い順に書き始めています。
何かきっかけが無いと入れないようなお店に、取材っていう名目で行けたり、意外なお店に遭遇したりして、色んな方から江古田の話が聞ける。やっぱりお店をやってる者同士なので相談もできるし、ちょっとしたそういう人間関係が広がることがものすごく楽しいです。
あと割と何の計画もなく書いたのに、結構年齢が上の方までファンの方がいてくださることや、「たぬきたん、新しいのないですか?」と声をかけてくださることも嬉しいです。
「たぬきたん」は全部自分で印刷して自分で切って、自分でホチキスをとめて600部作っているので大変ですが、それだけ読んでくれている人がいると思うと書いていて良かったです。
ここで「たぬきたん」を読むうえで欠かせない登場人物の話をしましょう。
大山田五郎
本作の主人公。
信濃生まれ。現在、大学の8回生。
実は大山田君のモデルは私です(笑)
あの世間を斜めにみている感じと、あの素直じゃない感じと。あとは実は前、私が吉祥寺に住んでいて人ごみが嫌で練馬に引っ越してきたので、もうほんとに大山田君の引っ越してくるシーンっていうのは、完全に自分の事を書いてるような感じです。
絵はもう他のイラストレーターさんにお願いして、私のタイプの感じの人を伝えたところ、ああいうイラストになって出てきました。それからは完全にもうキャラが文章とイラストと一致したので、もう勝手に動いてくれます。
菅山節子(通称:スガ子)
江古田にある大学の学生。芸術学部在籍。
スガ子さんは、勝手に出てきたんです。
やっぱり大学があるので、ここの大学生も出したいなと思った時にやっぱりキャラの濃い日芸生かなって。なんかアーティスティックなキャラクター?が江古田っぽいのかなぁとも思いました。あんまりそういう子が歩いていても江古田って皆びっくりしないじゃないですか、おばあちゃん達も。その感じが私はすごい好きなので登場人物として出しました。
尾丸洋平
大山田の通う大学の後輩。経済学部在籍。
尾丸君のモデルは実は私の相方なんです。
彼が江古田生まれ江古田育ちなので、江古田の昔のことを色々聞くんですよ。昔はここに何があってとか。
尾丸君は多分彼からインスピレーションというか、アイディアをもらって生まれたキャラです。
あと、一人可愛いキャラを書きたかったんです。
やっぱりみんな捻くれ者で、特に大山田君とスガ子さんはすごく強いので、弱い子も書きたいと思いました。
ガラクタや ネバーランド店主であり、「たぬきたん」作者である安藤仁美さんからの耳より情報!
その1
実は大山田君もあんまり話にはおおまかに出していませんが、一応好きな人がいるっていう、うすーい設定で書いているのでそれが誰か当てみてください。実は今までの中でもいくつかヒントの文章は出してきているので、誰か当ててくれる人はいないかなって秘かに思っています。
その2
1月号「第9話」に出てくる狸も実はお店の中にいます。探してみてください!
その3
「たぬきたん」に出てくるお店の店主さんたちは実際にいる人なんですよ。なので、江古田を散策するとき気にかけてみてください。
ガラクタや ネバーランド
〒176‐0006 東京都練馬区栄町39-7
TEL 070-6971-2598
営業時間 12:30~19:00
定休日 月曜日・火曜日
HP https://www.facebook.com/garakutaya.neverland
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最後までお読みいただきありがとうございました。Bに誘われて私も貴重な時間を共有することができました。
B言ってましたよ。
「ガラクタや ネバーランドは多種多様な品物が置かれていて、まるで子どもが目をキラキラさせながら宝探しをするかのように品物を見ることができる楽しい雑貨屋だったよ。だから、私も君もネバーランドの名前の意味がよく分かったね。『たぬきたん』の話も興味深かった。話を聞けば聞くほど安藤さんの江古田への強い思いを感じたよ。再度読み直そうと思う。A、君も一緒にどうだろうか?」と。
貴方もきっと分かっていただけたのではないでしょうか?
Aとの話はここで終わり、早速私も「たぬきたん」を読もうと思った。
END.
〈社会学部1年 北村、細谷〉