学生&卒業生インタビュー第7弾【メディア社会学科→就職→大学院に進学した 藤井 達也さん】
新たな出会いがあったり、初めての経験をしたりと、春はたくさんの初めてが訪れる季節。
しかし自分から何かを始めようとするためにはまず、そのことについて知ってみなければ始められません!
「まずは知らなきゃ始まらない」というサブキャッチを掲げて活動する私達が今回特集するのは、「大学院」。存在は知っているけれど、大学のその先にある大学院とは実際どんなところなのか、皆さんご存知ですか?
現在、大学院の博士後期課程3年である藤井達也さんにお話を聞かせていただきました!
藤井 達也(ふじい たつや)
2004年 武蔵大学 社会学部 メディア社会学科 第1期生として入学
2008年 一般企業に就職
2011年 武蔵大学大学院人文科学研究科社会学専攻博士前期課程入学
2013年 武蔵大学大学院人文科学研究科社会学専攻博士後期課程入学
2013年11月 社会学部メディア社会学科・山下玲子教授との共同研究において、吉田秀雄記念事業財団の第11回「助成研究吉田秀雄賞」の奨励賞受賞(詳しくはこちらをご覧ください)
2015年3月 共著として『ホストセリングを知っていますか?』(山下玲子・藤井達也)を刊行(詳しくはこちらをご覧ください)
2015年現在 武蔵大学大学院 人文科学研究科 社会学専攻 博士後期課程3年
――藤井さんは大学院でどのような研究をされていますか?
テーマとしては広告に着目しており、今はキャラクターを用いた広告の分類やその効果の研究をしています。もともとアニメが好きだったことがきっかけです。日本ではいろいろなキャラクターが広告で活用されていますよね。例えばキャラクターがパッケージに印刷されて宣伝されたり、キャラクター自身が宣伝したりしています。アメリカやイギリスなどの海外だとキャラクターを用いることには一定のルールがあるのに、日本ではそのようなルールがあまり見られない。これは、日本独特の状況だと思うので、それを分析することに価値があると思っています。キャラクターがこれだけ使われているにも関わらず、どういった効果があるのかについては、かわいいから受けるよねとか、興味引くよねぐらいの認識に留まっているのではないかと思い、そこを分析していきたいです。
――具体的に分析などはどういう風に行うのですか?
はじめに実際に広告を見ながら、コーディングシートと呼ばれるものに、一定の基準に沿って分類をしていきます。分類するのは、キャラクターの性別や年齢などの基本的な情報、宣伝されている商品の情報、その広告で表されている価値観などです。それを元に、データを入力し、パソコンを使って分析をしていきます。
――大学院に入る前、藤井さんはどのような卒業論文を書いたのですか?また卒業論文と博士論文はどのように違うのですか?
卒論のテーマは深夜アニメにおける暴力表現と性描写とキャラクターの分析でした。番組を実際に見ながら分析をする「内容分析」という方法を使ったのですが、実際の番組、例えば30分の番組を30分見ればそれで分析が終わる、というものではなくて、何回も同じ映像を見ながら分析をするので、大変でした。30分番組だったらその6倍ぐらい、つまり3時間かけて1つの番組を分析します。番組数が40くらいあったので、夏休みは全部費やしたと思います。卒論はある程度既存の研究をなぞったようなものでも認められます。一方で修士論文・博士論文は、その分野についての専門的な知識が必要になります。また、既存の研究をきちんと調べてまとめないといけませんし、なによりオリジナリティが求められます。
――ところで藤井さんはメディア社会学科の1期生とお伺いしたのですが、メディア社会学科に行こうと思ったきっかけは何ですか?
どこの大学に進学するか決める時に、私は大学で選ぶのではなくて、学部で選んでいました。具体的に何をやりたいと言うよりは色々なことに興味がありました。特に私はテレビなどのメディアが好きだったのでそれを専門にして、自分の好きなことを学べると思い、武蔵大学のメディア社会学科に進学しました。
――学部(大学)生時代に印象に残ったことはありますか?
研究に興味を持った動機とも重なるのですが、1年生の時に「メディアリサーチA※」という授業で募集のあったアルバイトに応募して研究の手伝いをしたことです。それが初めて研究に携わる機会だったので、印象に残っています。あとは友達と遊んだり、旅行に行ったり…という思い出があるのは、皆さんと変わりません。
※メディア社会学科の1年次必修科目
――どうして大学院に行こうと思ったのですか?
もっと研究をしたいと思ったからです。大学4年生で卒業論文を書き終えた時、その時に研究し足りないな、もっと研究したいなと思いました。さらに言うと、自分の手で自分がもっと知りたいことを研究したかったからです。
――大学院生の一日を教えてください。
時間があればずっと本を読んだり、研究していたりしますね。自分の研究をするために文献や論文を読むことや実際に調査を行うなど、研究に付随することをしています。またTA(Teaching Assistant)と言って、武蔵大学の授業のお手伝いをしたり、所属している研究会の手伝いをすることもあります。その他は大学生と同じように授業があれば授業のために本を読んだり、レジュメをまとめたりしていますね。大学にはお昼に来て21時くらいまでいます。長ければ夜遅くまでずっといることもあるし、論文を書いている時は泊まることもありますね。毎日同じことをするということはありません。
――武蔵の大学院の魅力は何ですか?
人が少ないことですね。メリットでもありデメリットでもあるのですが、メリットとして捉えるなら、人が少ない分、先生の指導が手厚く受けられます。ゼミを想像してもらえば分かると思いますが、人数が多ければ先生はそれだけ多くの学生に指導する時間を割かなくてはなりません。人数が少ない武蔵では個別指導のようにしてくれるというのが魅力の一つかなと思います。また、人数の多い他の大学の大学院だと設備などがあまり使えなかったり、部屋があってもその部屋に一人一つの机がなかったりすることもあるようですが、自分専用の机を持てることや、設備を大いに活用できるところ、色々な研究費などを支援してくれるところも武蔵の大学院の魅力だと思います。デメリットとしては、人数が多ければ色々な研究の話や討論ができますが、それがなかなかしづらいということです。ただもし人数が少くても、単位互換という形で他の大学に行って授業を受けることが出来るので、自分から討論の場を確保することはできます。
――外部との交流の機会もあるのですか?
外部での交流には学会や研究会が開催する研究発表の場があります。色んな先生や院生が学会の大会や研究会に集まります。そこではプレゼンテーションする場合や、ポスターを貼って発表する場合もありますね。その後、懇親会などに参加して、そこで仲良くなった先生から共同研究や勉強会に誘われたりすることもあります。
――そういう交流を持つ事によって、自分の視野が広がったと思いますか?
はい。そういった外部とのつながりによって、自分に足りなかった知識や、自分の持っていなかった新しい視点が身についたり、気づけたりすると思います。要は、自分の持っていないもの、自分の持っていない知識や価値観を持っている人と交流することで、新しい視点が手に入るのだと思います。
――では大学院に行って良かったと思うことはありますか?
見識が広がったというか、いろんな人とつながりを持てるようになりました。また、研究しやすい環境で学べることはいいですね。武蔵は研究に打ち込む環境としてはいいと思います。研究費も出るし、共同研究もできるし、本を書くこともあります。自分一人で書くわけではなくて、先生に機会をもらって他の先生と一緒に書かせてもらうことがありました。例えば私が参加していた研究会でまとめた本で、「ユーザーからのテレビ通信簿―テレビ採点サイトQuaeの挑戦」(学文社)があります。「メディアリサーチB※」の講義のレポート課題にも用いられました。また大学で取れる資格として社会調査士というものがあるのですが、大学院ではより高度な専門社会調査士という資格を取れるので、よりステップアップするために目指すのも良いと思います。
※メディア社会学科の1年次必修科目
――大学と大学院の違いは何ですか?
大学でもゼミなどでは自分から発信していかないといけない部分がありますが、大学院ではそれ以上に自分から何か行動しなくてはいけないという違いがあると思います。自分から何かしないと何も学んでいないのと一緒なので、自分から積極的に本や論文を読んだり、研究に取り組みます。もちろんそれに先生も応えてくれます。なので、より自発的に取り組まなくてはいけないというのが違いとしてあると思います。
――今、大学院に行こうか悩んでいる学生もいると思いますが、大学院はどういう人に向いていると思いますか?またアドバイスはありますか?
「いろんなことを知りたい」「色んな理論を知りたい」「知るのが大好き」「本を読むのが好き」というだけの人には、実はあまり向かない気がします。なぜなら色んな事を知りたければ、本で読めばわかるからです。何かこれを具体的にしたいという人が来た方が良いような気がします。例えば3.11の地震によって人々の意識がどう変わっていったのかを明らかにしたいなど、具体的な関心を持った人です。アニメの暴力表現を調べたいとか、子どもがテレビの広告についてどう考えてるのか知りたいとか、子どもがキャラクターに対してどう感じているのか知りたいなど具体的にこれを研究したいという考えをもった人に向いていると思います。
――最後になりますが、藤井さんから院に行こうと考えている人に、何か一言ありますか?
大歓迎です!院は研究するために行くところなので、何より明確な目標をもって来てほしいですね。
大学院では、分析や文献を読むことを中心とした研究はもちろん、学会での発表やTAなどから貴重な体験や外部との交流ができ、新しい視点が手に入ったり、いろんな人とつながりを持てるようになるなど、大学院だからこそできることがたくさんあることがわかりました。研究を完成させるためには、たくさんの時間と労力が必要ですが、しっかりとした目標を持ち、そこに向かってまっすぐ頑張っていきたい人達にとって、大学院はとても充実した環境であり、そこでしか得られないものがたくさんあるんだと感じました。
「大学院についてもっと知りたい!」という方は、ぜひこちらからより詳しい情報をご覧ください!
[社会学部2年 中村 経済学部2年 藤倉]