学生&卒業生インタビュー第9弾

2015年11月20日

武蔵大生が4年間過ごす街 “江古田”

他の街にはない独特な魅力に惹かれて訪れる人も多く、住民や学生達を含め、多くの人に愛されています。

今回は、そんな江古田の街で学生時代を過ごし、再び江古田に戻って、デザイン事務所「虎の子屋」を開いた、武蔵大学卒業生の佐藤瑞樹さんにお話を伺いました。

 

佐藤 瑞樹(さとう みずき)
1998年 武蔵大学 人文学部 社会学科 卒業
2013年 デザイン事務所「虎の子屋」開業~デザイン事務所である傍ら、雑貨販売、ネットラジオの運営など、幅広い活動をしている~

 

4年間ずっと同じ場所で

――どうして武蔵大学を選んだのですか?

出身が福島なのですが、どうしても福島を出たいと思っていまして、まず思いついたのが大学に行くことでした。進学先の条件として、「4年間同じところにキャンパスがある大学」というのを考えていました。学年ごとに通うキャンパスが変わってしまうと、またそこで人間関係が変わってしまいますよね。だから4年間ずっと同じ所にある大学を探して、武蔵大学を見つけました。4年間ずっとワンキャンパスであることと、系列の高校から上がってくる人が少ないので、派閥が出来にくいと思った事から、完璧だと感じたので、武蔵大学を選びました。

 

――人文学部社会学科を選んだ理由は何ですか?

DSC08732高校生の時はまだ何をやろうなんて全然考えていないので、社会学という学問も知らなかったんです。進学するにあたり、色々な情報を調べていたら、何に関しても、社会学に結び付けられることに気づいて。社会学は間口が広い印象があって、大学に入った後に、どんなことに興味を持っても、社会学と結びつけて考える事ができると思ったので、社会学科を選びました。

 

――ゼミではどんなことをしていたのですか?

ゼミでは、男女の役割についてなど、ジェンダー論についてずっと研究していました。議論をするにあたって、どうやったら話しやすいかという事も皆で考えて、お菓子を持ち寄って話し合いをするなど、雰囲気作りをする工夫もしていました(笑)あと、皆でスキーに行ったり、合宿に行ったり、青山ホールで鍋合宿をやったり、ゼミの指導教授だった山㟢先生(現学長)も交えて、皆でよく遊ぶ事もあって仲が良かったですね。山㟢先生はとてもフレンドリーで、生徒目線でいてくれる先生でした。去年の白雉祭で講演をしている姿を見ましたが、久しぶりにゼミを受けたみたいで、昔と変わらないなと思いました。

 

――卒論は何について書いたのですか?

卒論は「権力論」について書きました。当時はまだネットが普及しておらず、お金がない学生だったので、とにかく本を読んでいました。『蠅の王』というウィリアム・ゴールディングの小説を読んでいたら、「文学社会学」というものを見つけました。「文学社会学」は、本の中をフィールドにして、それを社会学的に読み解くという学問なんです。小説のストーリーは子どもを乗せた飛行機が無人島に墜落して、大人が全員いなくなってしまい、子どもだけでその無人島で生活しなくてはいけなくなった中で、社会規範があまり身についていない子ども達が、島の中で生き抜くためにどうしようかと皆で考えるというものです。作中では今まで通りのルールに乗っ取った生活をしていこうとするグループと、ルールから解放されて自分達の好きなように生きていこうとするグループとに二分化し、それがどんどん対立していきます。権力というのは最終的に社会を組み上げる仕組みの1つなので、その島での暮らしの中にどんな権力が働いて、子ども達の行動に影響しているのかを、社会学の「権力論」を使って読み解き、考察しました。ジェンダーもそうなのですが、何かしらの力が働いているから、女の人の役割とか男の人の役割が出来上がる訳です。どんな権力が働いて役割が決められてしまったのか、それを決める力は何なのかというのが「権力論」になってくるので、ジェンダー論を深掘りした結果、権力論にたどり着いたということかもしれません。

 

個人の市場価値を見出せる仕事

――WebデザインやWebプログラム制作を始めるに至った経緯は何ですか?

大学を卒業してしばらくは何をしていいのか分からなくて、ずっとバイトはしていつつも、フラフラしていました。その後、ふと個人の市場価値を見出だせるような仕事がしたいと思ったんです。ちょうどその頃、カラー表示のできるパソコンが普及し始めて、ホームページも出来始めて、自分でもホームページを作り始めていました。その時にわかに活気づいていたWebデザインにちょっと興味があったので、いろいろ調べて、とあるデザイン事務所を訪ねて雇ってもらった事が一番最初です。

 

――デザイン事務所に雇ってもらってから、虎の子屋を始めるまでどのような経緯がありましたか?

デザイン事務所でしばらく働いていたんですが、大きなプロジェクトが終わった事を契機に辞めました。一般的な会社は、課長や部長のように役職がありますが、そのデザイン事務所は役職がチーフデザイナーぐらいしかないので、プロジェクトごとに動いていかないと自分の価値観、価値基準は上げていけないんですね。そんな中、大きいプロジェクトが終わってしまって、みんな今後どうするかという話になり、段々周りが移り始め、私は半年ぐらい1人で仕事をしていたんです。でも、1人で仕事をしていると1週間平気で誰とも話さない事もあるような仕事の仕方だったので、これじゃいけないと思って、どこか行こうと考えた時に、今虎の子屋で一緒に働いている門田さんが、当時働いていた観光情報の編集プロダクションに関する会社でWebが出来る人が欲しいという話を聞いたんです。それでそこに入ってしばらく観光情報を扱う仕事をしていました。その編集プロダクションでは記事を書いたり、記事を集めたり、こういう情報が欲しい、ああいう情報が欲しいと、ライターさんやカメラマンに指示を出して、結局デザインというよりはWebコンテンツをつくるディレクションの仕事をずっとしていた気がします。その後にそこも辞めて、バンドをやっていたこともあり、ちょっと良い機会だからと、九州から北海道まで3か月間、車に楽器とキャンプ道具を乗せて、ずっとライブをしながら北上していくという遊びをしてました。その後戻ってきて、また別のWebの制作会社勤務を経て、門田さんとこのお店を作ろうという話になりました。門田さんはプログラムが強く、僕はデザインをやるので、Webが作れるという話になったんです。

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「開かれたデザイン事務所」をめざして

――デザイン事務所を立ち上げる場所として江古田を選んだ理由は何ですか?

知っている所でやりたかったんです。あと、お店のコンセプトがあって、それにあった場所がここだったからですね。コンセプトとは、「開かれたデザイン事務所」で、気軽に頼めるデザイン事務所をやりたかったんです。昔大阪でレコーディングをした時に、それが渋谷や原宿みたいな若者街にあるスタジオで、街の真ん中で、結構窓を開けっ広げで作業しているんですよね。そこの人曰く、ものを創る仕事は、結局人間の生活の中から出来上がるものだから、人間が行き交っているような、生活をしている事を感じながらつくっていないとだめだと言っていて、それに共感したんです。それで私も生活感がある所で仕事すると面白いんじゃないかなと思ったので、どこか商店街みたいな所に事務所を構えたいと考えていました。そして、ある日お昼ご飯を食べに江古田に来て、フラフラ歩いていたら、ちょうど良い物件を見つけたんです。

 

――デザインでこだわっているところってありますか?

こだわっている所は色ですね!私は色が好きなんです。この世の中が楽しくなっているのは、彩りがあるおかげだと思っているんですよね。デザインは色数を減らせば減らすほど、シュッと見えるように、形だけでできます。逆にそこに色を入れていけばいくほど、バランスをとるのが難しくなっていくと思うんですが、そこをあんまり怖がらないで、できるだけ色を入れていけるようにしたいです。

 

――Web上のものと、ポスターなどの紙媒体で、気を付ける事は変わりますか?

Webは、色々とページを探っていけるし、色々なものと対比しながら見られるけど、ポスターは本当に見方が違いますよね?PCからの近い距離で見るのではなく、ポスターは遠くで見るので、あまり細かくしても読んでもらえないし、パッと見で興味引いてもらって、近くに行って読んでもらえれば分かるといったようなものだから、最初のインパクトの方が重要で作り方が全く違います。ホームページの方は1ピクセルの集合体なので、デザインはもっと細かいと思います。文字もちゃんと読んでもらうために、配列に気を付けています。

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表現しやすい場所を提供する

――武蔵大学の白雉祭のホームページのWebデザインも作成されていましたが、どのような経緯でやることになったのですか?

白雉祭実行委員がホームページを作りたいとお店に来たので、じゃあお手伝いしましょうということになりました。その時は、人をもっと集めたい、白雉祭をもっと盛り上げたいと言っていたんです。そして、ホームページをちゃんと持っていない、毎年作り替えていたんだと聞きました。ずっと自分達の活動をPRできるホームページが欲しいと言っていたので、彼らの楽しい雰囲気を私が表現するというよりは、彼らがそのサイトを使って自分達が楽しいという事をPRできるような形になるよう、一緒に考えてデザインしました。Webって、きっと作って終わりじゃないんですよね。ずっと続けていくもので、クライアントさんが伝えようと思った事をそこで表現するのだから、表現しやすい場所を提供してあげる、場所を作ってあげる事がこの仕事だと思います。

白雉祭のホームページこちらからご覧下さい。

 

――クライアントさんの目線になって考えるということですね。

そうですね。加えて、その人のやろうと思っている事と、その人自身の技術に合うものを考えます。写真を撮るのがいいような人には、ビジュアルで魅せられるデザインを考えるし、文字の方が良ければ、書いて伝わるようなものをメインに考えます。多分その人の目線もあるし、その技術もあるし考え方もあるし、どういうものがいいかは相談しながら作ることが多いです。

 

――江古田地元情報WEBマガジン「えこだ島」を作っていらっしゃいますが、始めたきっかけは何だったのですか?

虎の子屋を始める時に、ただやっても面白くないので、どうやって江古田とコミュニケーションをとろうかと考えたことがきっかけです。その時に、以前に観光業をやっていたのだから、江古田のお散歩マップを作ろうと思って、色んな江古田の街のお店に話を聞いて回りました。でも紙の地図は作ってしまうと作りっきりになってしまいます。江古田のお店の情報はどんどん変わってしまうので、それを補完するために、Webを立ち上げようと思って始めました。最近はもうちょっと江古田のイベント情報を紹介するようなサイトに方向性をシフトしています。どちらかというと最初は、江古田の街の人とコミュニケーションをとるためのものだったんですが、それに加えて自分が知り得た情報を外部に発信するため、江古田にもうちょっと人が遊びに来たら面白いかなと思って今はやっています。

江古田地元情報WEBマガジン「えこだ島」こちらからご覧下さい。

 

――そのことによって、江古田の街の人との交流は深まりましたか?

多分そうですね。「えこだ市」という江古田のイベントがあって、そういったものにも参加しているので、特に同じ世代の街の人とは仲良くやっていると思います。「えこだ市」は毎回色々なパターンがあって、前回は4か所のちょっと大きめの飲食店内に、いろんなお店が入って、出店のように色々売りました。虎の子屋はグッズを持っていったり、あとは「夏」がコンセプトだったので、てぬぐいにみんなでデザインをしようというワークショップをやったりしました。

えこだ市こちらからご覧ください。

 

――虎の子屋ではどんなイベントをやっているのですか?

デザイン事務所なので、ジャケットから音楽を楽しむという事をしたら、音楽を好きな人も、ビジュアルを好きな人も楽しめるんじゃないかと思って、ジャケット百枚集めて、ダーッと並べてみようというイベントをやりました。それで色んな人に声をかけて、面白そうなジャケットを片っ端から集めて来て、百枚並べて、みんなにプロフィールやPRを書いてもらったんです。基本ジャケットを楽しむイベントだったので、バンドについてはあまり書かないで、誰が作ったかや、どうしてこういうジャケットにしたのかを書いてもらいました。聴くと変なバイアスが入ってしまうので、僕も全部は聴いていないんです。バンドの人は音楽の話をしがちですが、実はすごくジャケットにもこだわっているので、そのこだわりをちょっと聞いてみたいなと思ってイベントをやってみました。DSC08742DSC08794

 

――では、ここに置いてあるジャケットも、全く面識のないバンドの方のCDも置いてあるんですか?

全然知らない人もいますし、そのイベントで知り合った人もいます。見に来てくれる人も全然知らない人だったりするから、その人たちと話をするのも面白いですね。結局制作だけを引きこもってやってしまっていたら、誰とも話さなくても済みますが、それだとインプットがなくなってしまって、どんどん枯渇しそうになってしまうんです。こういうイベントをやると人が来て、必然的にコミュニケーションが取れるじゃないですか?(笑)お客さんもデザイン事務所と知らないで入ってくると、ただの雑貨屋だと思ってくるから、そのギャップを利用したコミュニケーションも面白いかなと思ってやっています。ここはもう制作・デザインの中のインプットの部分のような気がします。こういうものがあった方が、デザインのお客さんも、パッと見て、ああこういう色が好きなんですとか、こういう感じのものがいい、という風に話もできるから、何もない空間よりは物がいっぱいある方が、その人のアイデアも、刺激できていいかなと思いますね。

 

江古田の街を知ってみる

――江古田の良い所は、どんな所だと思いますか?

江古田は、全体的に程よいスペース感と、程よい人の数で、ゴミゴミもしてないけど、寂しくもないし、世代もお年寄りから子供まで幅広くいるし、生活している人の層が限定されてない感じが良いかなと思います。どんな人も受け入れてくれる街な気がして、そういう所が良い所だと思いますね。

 

――江古田でおすすめなお店はありますか?

その都度おすすめなお店を紹介できると思いますよ(笑)江古田って、結局、大きい集客施設はないんですよ。映画館とか劇場とか、テーマパークみたいなのはないですが、江古田全部で1つのテーマパークのような感じがするので、どこか1か所がオススメと言うよりは、江古田全部がオススメです。この店に遊びに来てほしいというよりは、江古田という所にちょっとフラッと遊びに来てみると楽しい所だよという風に思っています。

 

――最後に武蔵大生に向けて、大学時代にやっておいた方がいいことなどアドバイスがあったら教えてください!

江古田の街を知ってみるというのはいいかもしれないですね。私も全然知らなくて、ここに虎の子屋を作って、江古田の人達と話をしてみたら、色んな面白い話をいっぱい聞くんですよ。ゆかりがある人もいっぱいるので、江古田の街の事をちょっといろいろ知ってみると、自分がどんな街で4年間勉強して暮らしていたのかという事が分かると、とっても面白いと思います。すごく貴重な所にいたんだって、あとあと思うんですよ。

 

――虎の子屋の佐藤瑞樹さん、ありがとうございました。

 

 今回はWebデザインを職業とする卒業生の方にインタビューを行いました。佐藤さんの話を伺う前は、デザイナーに必要なのはクリエイティブであることだと考えていましたが、本当に必要なのはどうすればクライアントに寄り添えるか考えることでした。佐藤さんはクライアントのことを知ると、おのずと相手の考え方も分かり求められるデザインを作れることを教えてくれました。
私たちWebマガジンも読者の皆様が読みたいと思う記事作りをより心掛けていきたいと思いました。
江古田の良さも語って頂きましたが、私たちがいまだ知らない魅力が隠されていることに気が付きました。佐藤さんが学生へのメッセージで伝えていますが、武蔵大生はぜひ『江古田』を知って自分がどんな場所で4年間を過ごすのか、過ごしていたのか、考える機会にしてみてください。新しい見方が見つかるかもしれませんよ。

 

~虎の子屋information~

【営業時間】11:00~19:00 【定休日】不定休

【住所】東京都練馬区栄町25-10 武藤ビル6号

【ホームページ】http://toranokoya.com/

 

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(社会学部 1年 北村・今野 2年 新井・中村)

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