学生&卒業生インタビュー第16弾

2019年04月08日

あなたにとって、「家族」とはどのような存在ですか?

おそらく、考え方や捉え方は人それぞれだと思います。

昨今、様々な場面において多様性が重視されるようになりました。そんな現代社会に対し、家族とは何かを問いかけ、一石を投じたのが映画監督の加納土さんです。武蔵大学の学生だった加納監督が卒業制作で撮影したドキュメンタリー映画「沈没家族」が、2019年4月6日に劇場公開されました。

約2年ぶりとなる学生&卒業生インタビュー。
第16弾は加納監督に、学生時代のエピソードや映画を制作したきっかけについてお話を伺いました。


加納 土 (かのう つち)
-映画監督-
2016年度 武蔵大学 メディア社会学科 卒業  
2019年4月6日よりポレポレ東中野において映画「沈没家族」が劇場で公開中


◆大学時代について

――どんな大学生活を送っていましたか?
大学の授業で学ぶ理論っていうものに面白さは感じていたけど、それが実際の現場でもその通りになっているのかが気になっていて、色んな旅をしていました。例えば、沖縄の辺野古や高江に行ってみて、授業ではこういう風に言っていたけれど、実際の現場はどんな風なのかを見てみたかった。だから、疑問を持った所にはなるべく行くようにしてたし。

――じゃあ、行動力のある学生さんだったってことですか?
そうですね、あんまり勉強ばっかしてたわけじゃないかな。

――ちなみに成績とかは?
あー、だからよくあるパターンかもしれないけど、凄く興味のある授業は成績が良くて、そうじゃないのは成績が悪いって感じでしたよね。

――武蔵大学在学中から、監督になりたかったのでしょうか?
そういうわけではないです。結果的になった、というか。この作品が映画になるとは思ってなかったですね。

――では、この作品が映画化されたことで結果的に監督になったということですか?
そういうことですね。劇場で公開されるものを作ったっていうことで、やっぱり監督という肩書になりますよね。

◆映画「沈没家族 劇場版」について

「沈没家族」とは…90年代半ば、東京の片隅で試みられた共同保育の試み
1995年、シングルマザーだった母・加納穂子(当時23歳)が、加納土監督が1歳のときに、共同で子育てをしてくれる「保育人」を募集するためにビラをまき始めた。「いろいろな人と子どもを育てられたら、子どもも大人も楽しいんじゃないか」という加納穂子の考えのもと集まったのは独身男性や幼い子をかかえた母親など10人ほど。毎月の会議で担当日を決めて、東京・東中野のアパートでの共同保育が始まった。母・穂子が専門学校やその後の仕事で土の面倒をみる時間が取れないときに、当番制で土の面倒をみていた。「沈没家族」という名称は、当時の政治家が「男女共同参画が進むと日本が沈没する」と発言したのを聞いて腹を立てた穂子が命名。(映画『沈没家族 劇場版』公式ホームページより引用)

――そもそも、なぜ「沈没家族」という卒業制作をつくろうと考えたのですか?
僕をそこで育ててくれた大人たち、僕のことをシフトで代わりばんこで保育してくれた大人たちに、僕は10年くらい会っていませんでした。そんな大学2年の頃、久しぶりに同窓会をやろうっていうので当時の大人たちが集まったんですが、顔とか全然覚えていなくて。みんな楽しそうに僕の話をしてるんですけど、僕はその保育してくれた人の中で分からない人が結構いました。自分が育ったのは沈没家族というか、その個人個人のおかげっていうのは凄く大きいけど、この人たちのこと知らないなって。だからカメラを持って会いに行こうと思ったのが制作のきっかけですね。

――卒業制作の「沈没家族」が、劇場公開に至った経緯について教えてください。
卒業制作からPFF(ぴあフィルムフェスティバル)っていう映画祭に入選して、それが映画を多くの人に見てもらえるきっかけにはなっていました。そこから自主上映会をやりたいって言ってくださる方とか、マスコミの方から取材をされたりとか、その関係で劇場の人とはもともとつながりはありました。この映画が自主上映会などで注目されているのを見て、劇場の方からも、この映画を劇場公開しても面白いんじゃないかと思ってもらえて、声を掛けてもらいました。

――加納監督にとって、家族とはどのような存在ですか?
あー、ちょっと2時間くらいかかりますね(笑)。家族っていうモノ自体が僕の中で概念としてないっていうのが、ちょっと正直なところです。家族っていうよりは、それぞれの人間として見ているから。家族とは思えないけど、すごく大切な人っていう捉え方でも僕は全然いいと思うんですよね。だから沈没の保育人も家族っていう風には思えないけど、改めて再会してみて、ほんとに信じられる人たちだなって思いました。「家族じゃない」って言うのはモヤモヤするけど、大事な人たちって感じですね。

――映画の見どころについて教えてください。
まず、沈没家族というものがあった、共同で子供を育てる試みが20年前確かにそこにあった、っていうこと自体をまず見て噛みしめてほしいなっていうのはあります。すごく特殊な家族の形ではあると思うけど、個別に関わってくれた保育人や母、山くん*の思いには、すごく普遍的な感情もあります。特殊な家族のドキュメンタリーとして外から見るんじゃなくて、自分でももしかしたらやれるかもなっていうような感じで置き換えてみて、中に入ってみて映画を観てくれると良いかなと思います。
*山くん…加納土さんの父親のあだ名

――自分でもやれるっていうのは、自分も保育する側になるということでしょうか?
まあ、共同保育やってもいいじゃんっていうことでもあるし、もっと大きく言うと、これぐらい緩い繋がりでももっと生きやすくなれるんだ、生きづらさを感じた時にこういうやり方をしたらもっと楽になるんだっていうところで、見た人にとっても何かきっかけになる作品になったらいいなと思いますね。


◆今後について

――今後の目標はありますか?
えーっと、とにかく初日満員(笑)。一番近い目標だと(笑)。まあでもマジで、ポレポレ東中野で一日4回上映するんですよ。ポレポレ東中野の人も劇場を空けてくれている、期待してくれているから、それに応えられるように、とにかくお客さんに来てもらうというのが今の目標です。もう、先のことは分からん(笑)。

――今後も監督は続けるんですか?
そうですね。今、もう次の作品を撮ってます。

――じゃあ、また作品ができたらその作品を多くの人に見てもらうっていうのが、
そうですね、もうそういうことの繰り返しだと思います。

――最後に、武蔵大生へメッセージをお願いします!
沈没家族を卒業制作として出すのに大学4年の11、12月とかまで、1年半くらいかけたけど、あんまりうまく撮れなかったなってちょっとモヤモヤして、悔しかった。でも結果的に3年くらい経った今、面白いって言ってくれる人がいて、劇場でもやらせてもらっている。目先で結果を出したいって思うけど、凄く時間が経ってみたらその時やってたことはとても価値があったなっていうのは今になって思います。あの時途中で投げないで良かったなって。当時は、これ撮影技術やばいな、もっとちゃんと作ればよかったなって思ったけど、そういうところが意外と味としても生きる(笑)。味って言っちゃだめですけど(笑)。なんというか、自分の中で評価を決めないで、他の人に見てもらって、世に出したらそれが凄く時間がたって面白いって言われることもあるので、我慢強く…(笑)。まあ大学は4年間しかないから慌てちゃうのは分かるんですけど、後々絶対にそれが報われる時が来ますこれ全然だめだな、これ全然上手くできてないよなって思っても、今やっていることは集中してやった方がいいと思いますね。

――加納監督、ありがとうございました!


実はこの日、武蔵大学の広報室による加納監督と社会学部教授の永田教授の対談があり、そちらにも参加させていただきました。


対談では、加納監督が武蔵大学を選んだ理由や、在学中に制作したドラマに永田先生が出演した話など、貴重な話を聞くことができました。武蔵大学の公式Webサイトに対談の様子が掲載されていますので、そちらも是非!
卒業制作が劇場公開へ!『沈没家族』がゼミの武蔵から生まれた理由


加納監督、映画公開前のお忙しい中、貴重なお時間を頂き本当にありがとうございました!
4月中に、映画を見に行った感想の記事も書こうと思いますので、お楽しみに~!


映画「沈没家族 劇場版
監督:加納 土(武蔵大学出身)
公開日:2019年4月6日
上映場所:ポレポレ東中野

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(社会学部 3年 宮川・2年 柴田 / 経済学部 3年 本多)

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