学生&卒業生インタビュー第12弾【高校教師・田中 瑞希さん】
暑い日が続いておりますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?
学生の皆さんは長い夏休みの最中ですね。自分の将来についてじっくりと考えてみるチャンスかもしれません。色々なことに積極的に挑戦していきたいですね!
学生&卒業生インタビュー第12弾となる今回は、現役の高校教師の方にお話を伺ってきました。
武蔵大学の教職課程を経て、国語の教師となられた卒業生の方は今、どのように活躍していらっしゃるのでしょうか。
田中 瑞希(たなか みずき)
高校教師(担当科目:国語)
2014年 武蔵大学人文学部日本・東アジア文化学科卒業
教職課程を履修し、中学校教諭1種免許状(国語)・高等学校教諭1種免許状(国語)取得
埼玉県公立学校教員採用選考試験に合格
2016年現在、埼玉県立 高等学校 勤務
●「教師」のお仕事について
――教師は1日をどのように過ごされるのですか?
私は朝7時から8時半の間に学校に着くようにしています。朝の打ち合わせが8時半からあるので、それまでその日の準備やクラスのことをやっているときもあります。打ち合わせが終わると朝のSHR(ショートホームルーム)をして、その後は授業、帰りのHRを終えたら、部活をします。そのあとは、教材研究(授業の準備)をして、帰宅になりますね。
帰宅の時間は、部活が8時や9時までやっている日もあるので、遅いと10時や11時、早いと定時の5時に帰るときもあります。
――現在、担任をされているのですか?
はい、去年は1年生の担任で、今年はそのまま持ち上がったので2年生の担任をしています。
埼玉県は、正採用になって1年目は副担任とかに入ることがほとんどです。2年目に1年生の担任になって、そのまま学年が持ち上がっていくというケースが多いと思います。だから、おそらく来年は3年生の担任になると予想しています。
――ホームルームの時間では、どのようなことをしているのですか?
LHR(ロングホームルーム)ではいろいろやっていますね。学年や学校全体では、進路に関わる活動を行うことが多いです。働いている人にお話を伺ったり、専門学校や大学の模擬授業を受けたり、見学したりなどをしています。クラス単位では、遠足や文化祭などの行事に関する活動などを行っています。
――教師をしていて楽しいと感じる瞬間はどんなときですか?
去年1番楽しいなと思ったのは球技大会でした。それまでクラスの中の人間関係について、どうしようと悩んだ時期もあったんです。でも、勝ち進めたことによってクラスが団結できて、すごく盛り上がれたので、「ああ、このクラスで良かったなあ」と思いました。
――逆に、1番大変なことはどんなことですか?
私にとっては「クラス経営」です。クラスの子達をどういう風に導いていけるか、というところは、すごく難しいなと思います。
――「クラス経営」で何か心掛けていることはあるのでしょうか?
今年は切り替えをちゃんとしようと思っています。というのも、去年は、割とまじめで静かなクラスだったんですが、それでも言うべきところで言わないと、だらだらしてしまって締まりがなくなってしまったんですね。だからその反省を生かして、例えば掃除するときはきちんと掃除する、黙るときは黙る、といった、生徒がメリハリをつけられるように声掛けをするところから始めていこうと思っています。
――生徒同士の人間関係についての指導は、難しいところだと思うのですが、どのように行っていますか?
人間関係を作るのが難しい子は多いんですよ。だから話を聞いてあげるところから始めています。そのとき、生徒同士の関係そのものにはあまり口を出さず、個々の人間性を向上させるほうに目を向けるようにしています。例えば生徒の中には、自分のことを棚上げして相手を批判してしまう子もいるんですね。だから、「あの子が嫌だ」という話を聞きはしますが、自分に非はないかを考えさせるようにしています。
これは他の先生の受け売りなのですが、高校は義務教育ではないので、必ずしも全員と仲良くする必要はないと思うんです。社会に出てからも、嫌な人ってやっぱり嫌じゃないですか。だけど、その人がもし自分と同じ職場にいたとしたら、無理やり仲良くするというよりは、上手く付き合っていくことのほうが大事だったりしますよね。
だから生徒には、無理に仲良くする必要はないけれども、嫌だというのを見せないようにして、必要なことは関わるということを出来るようにしようね、という話はしています。
――卒業後、社会人になる生徒さんもいらっしゃるということですが、それを意識した指導をなさっているのでしょうか?
そうですね。生徒の中には挨拶が出来なかったり、お礼が言えなかったりといった、常識的な部分が充分ではない子もいるので、「そういうことをすると仕事が出来ないよ」といった話はしています。そういうのは今のうちに教えてあげないと、もう誰も言ってくれる人がいなくなっちゃうなーと思っています。
――今は何部の顧問をされているのですか?
女子バレーボール部の副顧問をしています。
合宿のときのサポートや、生徒の人間関係などのフォローをしています。
――部活動の顧問は、希望を出せるのでしょうか?
一応、何が教えられるかを聞かれます。でも、なかなか希望通りには配属されないもので、全然やったことのない競技を担当する方も結構います。私も、1年目のときはやったことのないバトミントン部の担当になりました。道具も一から揃えて、初心者の1年生と一緒にルールを学んでいくところから始めましたね(笑)
――慣れない競技の顧問になって、大変ではなかったですか?
けっこう前向きな気持ちで取り組めていたとは思います。「実際に生徒と一緒にやってみるといいよ。一緒にやってくれる、ずっと見ててくれる先生には、生徒は話しかけてくれるようになるし、信頼関係が築きやすいよ」って他の先生に教えていただいたりもして、稀にではありますが生徒と一緒にやってみました。体力がもたなくて大変なときもあったのですが、それでも頑張ってやってみると、生徒もいろいろ教えてくれるようになったりして。こっちが頑張ろうとしていると生徒も分かってくれる、受け入れてくれるんだなと思いました。
今のバレー部でも、はじめは顔見知りくらいで、距離を感じていた生徒たちが、一緒に練習をしていくなかで「先生うまくなったねー」とか色々言ってくれるようになって、今では「今これが出来ないんです」とか「進路どうしましょう」といった個人的な相談をしてきてくれる子もいます。
一緒に練習をする、しないに関わらず、大人がずっと一緒にいて、ちゃんと見ていてくれる、気にかけてくれているんだと生徒が思えることが大事なんじゃないかと思います。
――プライベートではどのように過ごされているのですか?
5日間学校があり土日が部活動なので、そもそもプライベートの時間は正直あまりとれていないのが現状です(笑)でもプライベートの時間を持たないと、仕事を一生懸命やっているように見えて中身が何もない人間になってしまうと思っているので、できるだけ時間はつくるようにしています。好きなことをやったり、本を読んだり、どこかに出かけたり、色々やっています。
●大学時代について
――教師になろうと思ったきっかけはなんですか?
私は教職課程を取ってはいたものの、実は始めから教師になろうと思っていたわけではなかったんです。他の大学で図書館司書の免許を取るための講座を受けていたとき、図書館の教育における役割を知り、「教育っていいな、仕事にするならこういうことをやりたいな」と思ったのがきっかけです。
――普通の就職活動と迷うことはありませんでしたか?
1度決めてしまったらもう迷いませんでした。3年生になったときに、他の免許も取ろうかなどいろいろ考えてみたんですが、最終的には、まず教職を一回で受かるようにしようと思いました。
――学生時代に受けた授業で役に立っていると思うものなどはありますか?
自分の専門である文学や、文学論はすごくためになったと思います。今でも当時のノートを見返すことがあります。
私は大野先生(人文学部 日本・東アジア文化学科:大野淳一教授)のゼミに所属していたのですが、先日も、さいたま文学館で開催された夏目漱石に関する公開講座でお会いすることが出来、嬉しかったですね。
――大学時代の経験で、今役に立っていることなどはありますか?
大学時代に遊んで過ごさなかったというところは、今も頑張れるところに繋がっていると思います。
3年で横断ゼミ※をやったり、教職課程の先生のすすめで子どもの教育に関わるNPO活動に参加させていただいたりとか、時間が空いたら何か頑張ってみようというエネルギーがあって、割と毎日いっぱいいっぱいでした。もちろん今のほうが働いている時間は長いのですが、そういうとき、学生時代にいろいろなことをやってきた経験が生かされていると思います。
※3学部横断型ゼミナール・プロジェクト
普通のゼミとは異なり、経済・人文・社会それぞれの学部の学生が集まり企業からの課題に取り組むゼミ
詳しくはこちらの記事をご覧ください!→『横断してみた。』
――学生時代にもらった言葉・得た経験で今の自分に生きていることはありますか?
NPOで子どもの教育に関わる活動をしていたのですが、ちょうど受験期のとき、生徒が志望校に落ちてしまった場合どう声をかければいいんだろう、という悩みがメンバーから上がったんですね。そのとき、その活動を紹介してくれた先生が、こんなアドバイスをくれたんです。
「そういうとき、もし私たち側がどうしようとなってしまったら、その子にとって希望先に進学するということが絶対的なものになってしまって、自分はダメだと否定されたように思ってしまうよね。そこでその子の人生が終わったというふうにしてしまう。だから私たちは、『順調な進路』というものが必ずしも1つの道ではないんだという姿勢でいないといけない」
実際、学校に来なくなり、中退を考え始めた子の相談に乗ったこともありました。そのとき、「私はあなたに卒業までいてほしいけれど、それがあなたにとって最善の、幸せな道でないのなら、別の道もあるんだよ」という話をしました。きっと、親やまわりの人は、学校は続けないとダメだってなりがちだと思うんですよ。でも、仮にドロップアウトしてからも人生は続くし、どれが正解なんていうのはその後で決まるから、自分が幸せになれる道が探せればいいなと私は思っています。そのような姿勢は、きっと学生時代の経験から来ているのだろうなと思いますね。ちなみにその子は今、元気に学校に来ていますよ(笑)
――教職課程は、授業数も多く時間のやりくりが大変だったと思いますが、どのように頑張られていましたか?
同じ教職を取っている仲間たちと励まし合い、協力しあいながら頑張りました。あとは気合です。
まわりには、部活動をやりながら、一人暮らしをしながら、という子もいたのですが、全部やりきろうって、みんな気合で頑張っていましたね(笑)
――武蔵大学に入ってよかったと思うのはどんなことですか?
やっぱり「小規模」なところ、ゼミが多かったところが良かったと思います。大人数の中に埋もれて自分が小さい存在になる、なんてことがなく、自分自身がどうあるべきかきちんと考えられました。教職も人数がそんなに多くなかったので、団結して協力しあうことができました。また、人文学部の学科は「~文学科」でなく「~文化学科」だから、文学以外の様々なジャンルのことを勉強できたのはすごく良かったですね。教授も生徒もマニアックな方がたくさんいて、面白かったです(笑)何かやりたいことがあったらすぐできるのもいいところだと思います。あと、雰囲気や居心地がとても良かったです。
●最後に
――田中さんが目指す、理想の教師像を教えてください!
生徒が、国語って楽しいな、学問的に面白いなと思ってくれれば、最高だと思います。授業の中で、もっと国語を学んでみたい、この人の作品を他にも読んでみたいと思ってくれる子が1人でも2人でも出てきてくれたら嬉しいです。
また、将来私のことは覚えていなくても良いのですが、一緒にやったことが何か残っていてくれればいいなと思います。クラス経営のときに声をかけたことで変わったこと、何かが出来るようになったこと、新しい考え方が出来るようになったこと、というのが、生徒の将来や人生に残ってくれたら嬉しいですね。
――武蔵大学の後輩にメッセージをお願いします!
大学4年間をフルに使って、やりたいことにどんどん挑戦してほしいと思います。遊ぶことやバイトも大事だけど、それ以上に、自分から何か行動を起こしてやってみるという経験をたくさんしてほしいです。
教職課程の人には、一発で受かれるように勉強してくださいというメッセージを残したいと思います!
田中さん、本当にありがとうございました!
終始笑顔で、丁寧に私たちの質問に答えてくださった田中さん。一言一言が、これまでの経験に基づくもので、貴重なお話を聴くことが出来たとともに、田中さんの考え方や生徒との関わり方には「なるほどなあ。その通りだなあ。」と思わせられることばかりでした。教職を取っておられる学生さんや、先生になりたいと思っている高校生にとっても、非常に参考になるお話だったのではないでしょうか?
武蔵大学の教職課程の詳しい内容については「こちら」をご覧ください。
(社会学部3年 新井・宮原 2年 北村・今野 1年 川嶋)
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