きじキジ的セレクションBOOKレビュー①
大学生の春休み。それは、約2か月続く……。
2か月。
2時間でもなく、2日でもなく2か月。
そんな2か月という期間には、かなり膨大な時間がある。
一編集部員の出来心で、2か月の総時間を単純計算して出してみたがとんでもなかった……。(結果はご想像通りです)
さて、2か月という期間の長さを実感して(途中編集部員の茶目っ気が失礼致しました)
我々は一体何をして過ごすべきなのか。
学校がある内はサークルや、レポート、課題etc..でしっかり時間をとりにくいのが大学生。
だから、まとまった時間がとれる春休みにショッピングや旅行など、やりたかったことを存分に楽しんでいる大学生も多いはず…。
でも、約2か月の春休み、せっかく時間がとれるのだから…
『そうだ!本読もう。』
ある編集部員のこの言葉から始まったこの企画。
今回は編集部員のきじキジ的セレクション本を2回にわたってご紹介していきます。
・今回記事内で紹介する本は以下の4つの条件から編集部員が選んでいます。
・武蔵大学ゆかりのもの(講義、人物)
・武蔵大学図書館から借りたもの
・生協購買書籍部で購入したもの
・江古田ゆかりのもの
・各本のレビューは各編集部員が担当しています。
・レビューはあくまで各編集部員の個人的な意見です。偏見もあるかもしれませんが、ご了承ください。
それでは、『きじキジ的セレクションBOOKレビュー①』を最後までお楽しみください!!
今回は3人の編集部員が、1作品ずつご紹介します。
『自殺論』の著者、デュルケームはマックス・ウェーバー、ゲオルク・ジンメルに並ぶ三大社会学者の一人です。社会学部にいれば必ず聞いたことがあるであろうこの本。人が自殺をする根拠を、個人の意識ではなく社会にあるとして進んでいきます。私がこの本を読むキッカケとなったのは、社会学科1年生の必修授業「社会学基礎ゼミ1」です。そもそも基礎ゼミとは、大学で学ぶ上で重要なレジュメの作成の仕方やレポートの書き方、フィールドワークでの観察の仕方などを学ぶ授業です。私が所属した基礎ゼミは、ゼミ生全員に担当が割り当てられ、自分が担当となった箇所を授業内で報告し、検討していくという講読型のゼミでした。
社会学を学ぶ上でとても重要な本である『自殺論』ですが、1897年に発行された古典であるため、正直に言うと私にはとても難しい内容でした。しかし、ゼミ生みんなで読み進めることでなんとか1冊を前期のうちに読み終わることができました。読み終わった時の達成感はハンパじゃなかったです!
私が一番興味深いと感じた部分は、全体的に女性の扱いが酷いところです笑
「女性は学が無いから、あれこれ悩むこともなく、ストレスもないはずだから男より自殺しない!」というような事が普通に書いてあるのです。今このようなことを書いたら確実に炎上するでしょうが、この時代ではまだそれが一般的な認識であったのだということが分かり、衝撃を受けました。
社会学に興味がある方は、ぜひ『自殺論』読んでみてください!
『江ノ島西浦写真館』は『ビブリア古書堂の事件手帖』で知られる小説家三上延の初の単行本です。
三上延さん*は武蔵大学の卒業生であり、生協購買書籍部内の読書マラソンコーナーにて、サイン色紙が飾られるなどなんだか身近に感じられる小説家。そんな作家が鎌倉の古書堂に続いて鎌倉の少し先、江ノ島の閉館寸前の写真館を舞台にした物語を書き上げました。
この物語は祖母の逝去を機に閉館する写真館に残された「未渡し写真」に隠された謎、そして孫の繭を中心とする個性溢れる人びとの秘密をひもとくミステリが繊細な描写で描かれ、 その描写の繊細さが島独特のリズムとライフスタイルをも美しく伝えます。物語は基本主人公の繭視点で進みますが、視点がコロコロと変わるので写真に秘められた謎を多角的に映し出し、謎の真相を味わい深いものに変えていきます。
さて、三上さんの作品の魅力の一つはなんといっても”伏線(トリック)の仕込み“
今回も、一枚の写真に秘められたミステリをより複雑にさせるトリックが物語内に散りばめられ、そのトリックが二重にも三重にも生きてくるのが読んでいて面白いです!!そして、謎の始まり、1枚の写真に隠されてきた想いが表出したとき、物語はよりいっそう盛り上がりを見せます。物語では大学生時代の繭の過去の描写が出てきますが、もしかしたら三上さんが大学時代、武蔵大学での学生生活を思い浮かべながら、書かれた一節かもしれません。武蔵大生としては、そんな風に想像するとより物語が楽しくなりますね。
読みやすさはピカイチ!ペラペラとページを進める手が止まらない。読み進めるほど、真相が気になって仕方ない。あれ、『江ノ島西浦写真館』読んでみたくなっていませんか?
*三上延さんは特集『学生&卒業生インタビュー』でMusashi Web Magazineの取材を快く承諾してくださいました!!
→その記事は『学生&卒業生インタビュー 第14弾』で。
『江古田ワルツ 喫茶〈ひとつぶの涙〉事件簿』は基本的にあまり冴えない男子大学生、小林君の視点で進みます。親近感が湧きますね。小林君は江古田にある日本茶喫茶、「ひとつぶの涙」でバイトの面接をうけます。その店には、童顔で一見オーナーには見えないママや美人アルバイトの海江田さんが働いていました。ママはクセのある人で小林君は物語の中で頻繁に振り回されることになります。しかし頭のキレはよく、店を訪れる客の相談事や謎などを次々と解決していきます。でも発言がぶっとんでいることが多いです。コナンというよりは古畑任三郎のような印象ですね。海江田さんは物腰も柔らかく、当然小林君は海江田さんに恋をすることになります。小林君は作中で何回か他の女性キャラに目移りするするのですが海江田さんのことが一番みたいです。
さて、店には色々なお客さんがきます。そのお客さんが何かしらの話をもってきてママがその謎を解いていくスタイルで話は進みます。お客さんの中には学生が多く、武蔵大学の学生のキャラもいます。一回出たキャラはその後も出てくることが多いので気に入ったキャラの再登場を待つのも醍醐味です。
そんなに重い話はなく、ゆったりとしたペースで進んでいくので小説をあまり読まない人にもオススメの本です。ぜひ『江古田ワルツ 喫茶〈ひとつぶの涙〉事件簿』、ご一読ください!!
3人の編集部員が3冊のオススメ本をご紹介しました。
気になった本があれば、ぜひ手に取ってみてください。
ちなみにほとんどの本が生協購買書籍部で買えますよ。
(Musashi Web Magazineには生協購買書籍部の記事もありますよ→第一弾/第弐弾)
たかが、2か月。されど、2か月。
せっかくの長期休み、利用して『そうだ!本読もう。』
次回は3月公開。
〈レビュー① 雨池、② 北村、➂ 小松崎〉
〈編集 北村・細谷〉