武蔵大学探検隊「宮古島の聖地狩俣、その集落誕生の井戸を追え」!
とても不幸な朝が来た… 大学四年生からすると、絶望的な早起きである。
頭はまだ1割も起きていないが、調査に備えて朝ご飯をいただいた。
↑もずくの味噌汁、ソーセージ、納豆。ごきげんな朝飯だ…
急いで胃に詰め込み、身支度を整えて遂に発掘調査が始まった!
↑朝焼けの中、足取りは軽やかに現地へと向かう発掘隊員達。
上の写真の奥に見える山、それを超えた先に調査対象があるという。
この発掘調査ではいくつかの班に分かれ、それぞれ様々な調査対象を発掘・探検する。
私の属する班が任されたのは、「イスゥガー・クスヌカー」の調査と整備である!
…といわれても何だか分からないだろう。これらは何なのか、一言でいうと井戸である。
もちろん普通の井戸ではなく、どちらも宮古島市の有形文化財に登録されているものである。
そして集落には、イスゥガーにまつわるこのような伝承がある。
昔、豊見赤星テダナフラ真主という女神が、当原という地に天から降り立ちました。ところが 水がなく大変困ったので、島尻の海岸を西へ移動し、イスゥガー(磯井)を見つけ、(中略)住み始めました。(宮古島市教育委員会「綾道」25頁より引用)
クスヌカーの言い伝えには、
時の長「大城殿(うぷぐふどぅぬ)」が掘った井戸で、「大城殿が井戸の掘削を思い立ち、村人たちを呼び集め(中略)鉄製道具を使い、クスヌカーを掘ったところ、うまい水が豊富に湧きだしたので、人々は余りの嬉しさに村を挙げて四日三晩祝った。」と歌われています。(中略)このように鉄器の伝来にも関わる重要な井泉と考えられています。(同宮古島市教育委員会「綾道」25頁より引用)
と伝わっている。このように、調査対象であるこの2つの井戸は集落の発祥に関わる井戸であり、地元の方々に神聖な場所として信じられているのだ。
かつての人々が井戸へ行くために使っていた道を切り開き、その井戸を調査・整備する。それが今回の調査目標なのである!
↑ゲストハウスゆくい(宿)・クスヌカー・イスゥガーの位置関係
出典:宮古島市教育委員会「綾道 四島」
https://www.city.miyakojima.lg.jp/soshiki/kyouiku/syougaigakusyu/syougaikakusyu/files/aya_yusumanishibe01.pdf
宮古島市HP「有形・無形文化財」
https://www.city.miyakojima.lg.jp/kanko/bunkazai/miyakojimabunkazai/bunkazai.html
画像出典:宮古島市教育委員会「狩俣コース」(一部改変)
https://www.city.miyakojima.lg.jp/soshiki/kyouku/syougaigakusyu/syougaikakusyu/files/aya_yusumanishibe01.pdf
前掲写真奥の山を、どんどん奥へと入っていく調査隊員達
それじゃあ中村くん、これを持ってね。折りたたみ式のノコギリだよ。
え、ノコギリ!?
道を草木が塞いでいたら、ナタで切り分けて行くんだ。まあおおよそは今までの調査で開拓済みだけどね。
(人生初のノコギリで困惑)
↑踏み均された獣道、そこを辿って井戸へゆく。(本当は8号館外階段ばりの急勾配)
え!?この道(?)を下って行けと………できらぁ!!
しかしそんな私の悲鳴を他所に、容赦なく進んでいく隊員達。このまま取り残されては文字通り遭難だ。
そうなんだ。周りは草木生い茂るジャングル、助けは来ない。
ここで中村、恐れながらも足を踏み出した。
うおおおお!!!
(ここからは着いていくのに精一杯で、写真を撮る余裕もありませんでした。ご容赦ください。)
↑後輩が撮ってくれた動画、チラリと奥に海が見える。もし足を滑らしたら真っ逆さまだ。
(本当にかつての住民は井戸の水を汲みにここまで下ったのか??)
などと疑問と不安を感じながらも、懸命に下っていくこと5分ほど…遂に!
ようやく1つ目の井戸、「クスヌカー」に到着した!
↑動画では遠くに見えていた海が、気づいたら近づいていた(先生撮影)
あ、中村くん、くれぐれも落ちないでね。深さ何メートルあるか分からないから。
ぴぇ…
あと井戸周りの石垣も脆いから、近づかないでね~
井戸を覗くと、日中でも全くの暗闇で何も見えなず、ただ「助からないな」ってことは直感できた。
これまでの調査であらかた草刈りとかは終わってるし…よし、それじゃあスキャン、始めるか
隊員たちはおもむろにスマホを取り出し、怖がる様子もなく井戸をスキャンし始めた。
そのデータがこれだ→
↑かなり精度が高いが、しかし深いために奥は不明だ。
なるほどスマホならば大きな道具も無く手軽にスキャンできるし、3Dデータで立体的に遺構を確認することができる。
考古学の現場にも、DXの波が来ているのだ!
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