武蔵大学探検隊「宮古島の聖地狩俣、その集落誕生の井戸を追え」!

2024年09月20日

 

とても不幸な朝が来た… 大学四年生からすると、絶望的な早起きである。

頭はまだ1割も起きていないが、調査に備えて朝ご飯をいただいた。

↑もずくの味噌汁、ソーセージ、納豆。ごきげんな朝飯だ…

急いで胃に詰め込み、身支度を整えて遂に発掘調査が始まった!

 

 

 

↑朝焼けの中、足取りは軽やかに現地へと向かう発掘隊員達。

上の写真の奥に見える山、それを超えた先に調査対象があるという。

 

 

この発掘調査ではいくつかの班に分かれ、それぞれ様々な調査対象を発掘・探検する。

私の属する班が任されたのは、「イスゥガー・クスヌカー」の調査と整備である!

 

…といわれても何だか分からないだろう。これらは何なのか、一言でいうと井戸である。 

もちろん普通の井戸ではなく、どちらも宮古島市の有形文化財に登録されているものである。
そして集落には、イスゥガーにまつわるこのような伝承がある。

 

昔、豊見赤星テダナフラ真主という女神が、当原という地に天から降り立ちました。ところが  水がなく大変困ったので、島尻の海岸を西へ移動し、イスゥガー(磯井)を見つけ、(中略)住み始めました。(宮古島市教育委員会「綾道」25頁より引用)

 

クスヌカーの言い伝えには、

 

時の長「大城殿(うぷぐふどぅぬ)」が掘った井戸で、「大城殿が井戸の掘削を思い立ち、村人たちを呼び集め(中略)鉄製道具を使い、クスヌカーを掘ったところ、うまい水が豊富に湧きだしたので、人々は余りの嬉しさに村を挙げて四日三晩祝った。」と歌われています。(中略)このように鉄器の伝来にも関わる重要な井泉と考えられています。(同宮古島市教育委員会「綾道」25頁より引用)

 

と伝わっている。このように、調査対象であるこの2つの井戸は集落の発祥に関わる井戸であり、地元の方々に神聖な場所として信じられているのだ。

かつての人々が井戸へ行くために使っていた道を切り開き、その井戸を調査・整備する。それが今回の調査目標なのである!

↑ゲストハウスゆくい(宿)・クスヌカー・イスゥガーの位置関係

出典:宮古島市教育委員会「綾道 四島」
https://www.city.miyakojima.lg.jp/soshiki/kyouiku/syougaigakusyu/syougaikakusyu/files/aya_yusumanishibe01.pdf
宮古島市HP「有形・無形文化財
https://www.city.miyakojima.lg.jp/kanko/bunkazai/miyakojimabunkazai/bunkazai.html
画像出典:宮古島市教育委員会「狩俣コース」(一部改変)
https://www.city.miyakojima.lg.jp/soshiki/kyouku/syougaigakusyu/syougaikakusyu/files/aya_yusumanishibe01.pdf

 

 

前掲写真奥の山を、どんどん奥へと入っていく調査隊員達

それじゃあ中村くん、これを持ってね。折りたたみ式のノコギリだよ。

え、ノコギリ!?

道を草木が塞いでいたら、ナタで切り分けて行くんだ。まあおおよそは今までの調査で開拓済みだけどね。

(人生初のノコギリで困惑)

↑踏み均された獣道、そこを辿って井戸へゆく。(本当は8号館外階段ばりの急勾配)

え!?この道(?)を下って行けと………できらぁ!!

 

しかしそんな私の悲鳴を他所に、容赦なく進んでいく隊員達。このまま取り残されては文字通り遭難だ。

そうなんだ。周りは草木生い茂るジャングル、助けは来ない。 
ここで中村、恐れながらも足を踏み出した。

うおおおお!!!

(ここからは着いていくのに精一杯で、写真を撮る余裕もありませんでした。ご容赦ください。)

↑後輩が撮ってくれた動画、チラリと奥に海が見える。もし足を滑らしたら真っ逆さまだ。

(本当にかつての住民は井戸の水を汲みにここまで下ったのか??)

などと疑問と不安を感じながらも、懸命に下っていくこと5分ほど…遂に!

ようやく1つ目の井戸、「クスヌカー」に到着した!

↑動画では遠くに見えていた海が、気づいたら近づいていた(先生撮影)

あ、中村くん、くれぐれも落ちないでね。深さ何メートルあるか分からないから。

ぴぇ…

あと井戸周りの石垣も脆いから、近づかないでね~

 

 

井戸を覗くと、日中でも全くの暗闇で何も見えなず、ただ「助からないな」ってことは直感できた。

これまでの調査であらかた草刈りとかは終わってるし…よし、それじゃあスキャン、始めるか

隊員たちはおもむろにスマホを取り出し、怖がる様子もなく井戸をスキャンし始めた。 

そのデータがこれだ→

 ↑かなり精度が高いが、しかし深いために奥は不明だ。

なるほどスマホならば大きな道具も無く手軽にスキャンできるし、3Dデータで立体的に遺構を確認することができる。

考古学の現場にも、DXの波が来ているのだ!

 

次ページ:残すは「イスゥガー」、さらなる試練が中村を待っていた。

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