編集部「10周年」という新境地

2023年07月05日

「MusashiWebMagazineきじキジってなんですか?」10年目のきじキジ部員が、10年前にきじキジを創設した先生に聞いてみた。

 


メディア社会学科 小田原敏教授(以下、小田原先生)を迎えて、10号館きじキジ編集部からお送りします

 

 きじキジって、同級生とかに聞かれたときに「サークルでも部活でもない微妙な組織」ってよく説明するんですけど………

10年前、どんななりゆきで始まったんですか?

 そもそもは2013年、僕が広報委員会ってところの委員長だったんですよ。

広報委員会・・・(小田原先生註)大学教員で組織される各種委員会のひとつ。公式サイト、大学案内をはじめオープンキャンパスや車内広告、屋外広告など広報活動に関する方針等を決めて「いた」(現在は役割がアドバイザーに変化)

大学の広報活動に対して起案ができる立場で、武蔵に必要だった学生主体のウェブマガジンのために予算が確保できたわけです。役得ってことじゃないけどね笑

 笑笑笑笑


(※この瞬間の写真ではないのですが、それにしても笑顔が素敵すぎる小田原先生)

 

 広報予算自体は増えないので、何とか切り詰めて捻出した予算「どうかこれに使わせてくれ」と複数の会議で頼み込んで、承認されたってわけ。

 おかげで今の僕らがあるって考えると………ありがたいとしか言えないっすね笑

 

 

 で、じゃあ「どうしてウェブマガジンだったのか?」っていう話ね。

大学生のいろんな活動は、正課(講義、実習など)と正課外(=課外活動。サークル、部活など)に分けられる。

でも、本当はここに中間領域があるの。

 中間領域、なるほど………?


準正課=「正課の教育効果をより向上させるもの」(小田原敏「社会実践プロジェクト」、『私学経営 No.564』(2022.2)より引用。上図は同文献を参考にして編集部で作成)

 

 単位取るためでもない、ワイワイ楽しむだけでもない、でもやった方が本人の学びのために良い。

そういう活動が必ずあって、これを準正課というんだよ。

でも今の大学はほとんどその領域が抜けている。授業終わったらすぐサークルとか行っちゃうでしょ?

 一般的な大学生のイメージも、そんな感じですよね。

 僕は当時から、こういう大学のあり方に不満があって。

たった4年しかないのに何も経験させてあげないで、卒業だけさせちゃってどうすんだよって思ってたの。

 なるほど。

 それで、まずコミュニティーFMで学生にラジオやらせてみようって2004年に「ラジオむさし」を始めた。

ラジオむさし・・・(小田原先生註)2004年夏のオープンキャンパスで旧1号館にスタジオを設け来場者向けに生放送

その翌年にムサシテレビ(MTV)が始まって、いい感じに軌道に乗ってきたと。

ムサシテレビ(MTV)・・・(小田原先生註)ラジオ聴取はオーキャン来場者もなじみがなく低調だったため2005年以降はテレビに


2007年、MTVの撮影風景

 

 ただ一つ気になってたのは、活動が活動だからメディア社会学科の子ばっかりになっちゃった。できれば人文とか経済の子も絡んで、一緒になってやれば面白いだろうなあと思ってて。

それで、ウェブマガジンになった、というわけ。

 小田原先生のそういう問題意識から始まってたの、知らなかったです。

 ラジオがあって、映像があって、インターネット………なんかメディアの歴史みたいだ

 


メンバーと話し合って決めたという「企画・制作のテッソク」。考え方は今も引き継がれている

 

 「きじキジ」って名前も立ち上げのときにみんなに考えさせたの。

 気になってたんですけど、「きじキジ」以外の名前候補ってあったんですか?

 最初は「がんりゅう」なんて案もあった。

 がんりゅう………?

 武蔵→宮本武蔵→巌流島、で「巌流」

 Musashi Web Magazine 巌流

 新聞のコラムだ

 学生たちが「もっと簡単な方が覚えられやすいんじゃない?」「じゃあ雉と記事をかけて『きじキジ』にする?」そうやって決まって、ゆるーく始まったんです。

 

 

 そう、ウェブマガジンに目をつけたのは、もう一つ理由があって。

僕のゼミの卒業生で今映像作家やってる、藤代雄一朗くんがきっかけなんだよね。

彼が卒業したての頃に「自分でウェブサイト作ったんです」って見せてくれたの。インタビューして記事書いて、まさにきじキジみたいなことをやってた。

 その当時って、ブログとかウェブコンテンツやるのって珍しかったんじゃないですか?

 まだね。やっぱり既存のプラットフォームに入れるのが普通だった。はてなブログとか。

「なかなか面白いじゃん! それでお金になるんだ?」「いや金には全然ならないんですよ〜」って。制作会社で働きながら趣味でやってたんだよね。

藤代雄一朗さん来訪

小田原ゼミの公式ウェブサイト「odasemi」より。きじキジと同時期にこのサイトを自作されたそう

 

 仕事と趣味っていうか、まさに正課と課外の中間みたいなことを体現してる………笑

 そうそう。でもそれいいことだよって、金に関係ないところで、他の人と対話をして、それを発信する。

彼の話を思い出して、ウェブマガジンいいじゃんって思ったんだな。

 

 

 ただ、今じゃないから新しくウェブサイトを始めようっつったって一朝一夕じゃなくてさ。立ち上げた2013年のメンバーはほとんど、全然パソコンとか詳しくない人ばっかりなんだよ。

これ、初代のメンバーね。専門の技術者に教えてもらってるところ。


立ち上げメンバーの先輩方。「経済とか人文とか、いろんな子がいたんだよなあ(小田原先生)」

 

 当時の先輩たちは、どういうつながりで集まったんですか?

 人づてだよね。だから技術面だけじゃなく、活動の基礎をまずは整えてやる必要があった。

「これこれこういう実践的な取り組みですから、専門のサポートが必要なんです!」って言って、広報スタッフとかを説き伏せて、作っていったわけ。

 笑笑笑笑

 まあ、そんなこんなで裏側は結構大変でさ。こんなの作ってやってたんだよ。


必要機材リスト&創刊準備スケジュール表

 

 がっつりタスク管理してますね………

 これね、学生は全く知らないんだよ。

 えっ!?

 言われた場所に行ってみたら機材があって、教える人がいて、っていう状態だよね。

でも、こういう面倒なことをやらせなかったからこそ、いざ始まってからの企画会議すごい面白かったんだよ。

 記事読みました! 創刊後すぐに、インタビューとかロケとかいろんな企画が動いてて、ものすごい熱意を感じました。


卒業生インタビューや、


ロケ企画『妄想デート』シリーズ、


編集部の日常ブログ的な記事などなど
(↑タップして読む↑)

 

 企画は学生のみんなが自由にやればいい。教員と広報はあくまでサポート役。そこがミソだったんだよね。

 

 

 翌年の夏には写真のワークショップをやった。そもそも10年前なんて、大学生が簡単にパシャパシャ撮るような時代じゃなかったのよ。

 SNSもまだ普及してないですもんね。

 1人ずつカメラ持たせて、江古田の街じゅう引き連れて………それだけじゃみんな疲れるから、最後にはモロッコ料理屋で打ち上げでメシ食わしてやるからって誘い出して笑

WebMagazine ワークショップ

学生や卒業生との交流が本当に楽しそうな、先生のブログ

 


ちなみにモロッコ料理屋とは、千川通り沿いにある〈アランダルース〉さん
(↑タップして読む↑)

 

 まあ、そうやって場所とか道筋をお膳立てしてやれば、学生が乗っかってくれるって話だよね。

たとえば、同じ準正課の取り組みでACの広告プロジェクトってのがあって。

ACプロジェクト・・・2008年度より 「公共広告CM学生賞」出品のための学内コンペを開催。現在はメディア社会学科の「方法論ゼミ」に組み入れられ、単位化。(『私学経営 No.564』を参照)

立ち上げのときに、Appleの人を講師に呼んで、映像編集とかの講習会をタダでやってもらったんだよ。それで、作り出す子が増えたんだよね。

 最初の一歩ってやつですよねえ。きじキジの活動でもよく感じます笑

 やっぱり、環境さえ用意してあげれば興味もつ子はいっぱいいる。せっかく学費払って、4年間も身を置いてる大学なんだから、何かやってみたい、首突っ込みたいと思ってるはずだからさ。

 

 

 ちなみに、ここ数年のきじキジの芸風というか、記事の雰囲気って、見ていてどう感じますか………?

 いやね、面白くなってきたと思うよ!

 あっ本当ですか!(うれしい………)

 どう面白いかっていうと………以前は、教員が近くにいるせいでどうしても、ちょっと堅苦しく考えちゃう人が多かった。

大学のためになる記事でももちろんいいし、受験生や未来の後輩のためだったら何でもいいけど、あんまり忖度した感じにしない方がいいよって言ってたの。

でも今見るとそんなに気にしてなさそうだし。

 ありがたい言葉です………励まされます!

 タイトルだけ見ると、受験生に役立つのかなっていうのも結構増えてるけど、まあそれはいいんじゃない?

やっぱり今わかんないんだよね、「この記事なんかいいとこついてるな」って、価値があるかどうか、決めるのは読者だから。

だからどんな企画でも、やってる本人が「これやりたい!面白くなるはず!」って思ってれば、それは誰かには必ず引っかかるんだ。

 

 

 「受験生に役立つ」って話につなげて………きじキジの読者層の話なんですけど。

Googleアナリティクス(ウェブサイト訪問者の統計・分析)を見てると、たしかに10代くらいの読者が多いんですけど、むしろ20代とか30代以上のサイト訪問者数も増えてて。卒業生の方たちなのかな?

 昔、僕もそれ見てたんだよ。で、ひとつ思い至ったことがあって。

その頃って、大学の公式情報はあっても「非公式」情報がなかったわけ。学生が実際どんなこと考えてて何やってるとか、そういう情報ってもともと需要があったんだね。

 最初の頃のネタ案で「むさしど」っていうのがあって。要するに過去形の「むさし – ed」だってわけ。卒業生に話聞きにいかねえか、っていう企画なんですよ。


タイトルの書体がもうかわいい

 

 いわゆる卒業生インタビューの原型ですかね?

 なんかこう………大学の公式情報って、ちょっとよく書きすぎてるからリアルじゃないんだよな笑

パンフレットとかの紙媒体に残るものだから、という特性はあるけど………もっとくだけた話が聞きたいよねって。

「学生時代なんか平気で授業サボってて………」みたいな話が書きたいわけ笑

 非公式じゃないとできないですね笑 そっちの方がむしろ聞きたいですし。

 やっぱり「大学のためだけじゃない」っていう自覚。オリジナリティと独立性は自分らが持ってるんだ、って内心で思ってないとね。まあみんな大人だから、そうあってほしいよね。

 

 

 ………非公式らしい活動といえば、今年の初めに「大学4号館の正体に迫る」っていう企画案が動いたことがあったんですけど。取り壊されるってニュースを聞いて。

4号館・・・大学正門側に面して建っていた施設。隣接する2号館(食堂)の工事に先立って、2023年2月に取り壊された。

 それなら俺に聞いてよ! なんせ俺、あそこで餃子パーティーやったんだから。

 なんすかそれめっちゃいいじゃないですか………!

 odasemi2015,odasemi2016 餃子パーティー

2019年までほぼ毎年のように餃子パを開催していたおだゼミ

 

 前の週とかに「金ねえ」ってやつがいるんですよ。「来週じゃあ餃子パーティーやるか」つって。

 これは………うらやましい笑

 いい施設だったなあ。大学にあんな場所そうそうないよ。それでね………

(編集担当より:4号館ほか「今はなき大学施設」についてはちかぢか別企画で特集させていただきたく割愛(めちゃくちゃ興味深かった!)。乞うご期待)

 

 こんなのも持ってきたよ。立ち上げ当時に作ったポスター。


今も7号館に貼ってあります

 

 このきじキジのロゴマーク、初代編集長の石山くんが一晩で作ってきたの。

 えっ? そうだったんですか?

 そうそう。雉をモチーフにしてよくちゃんと作ったなと思ったんだけど。

 


10年後もがっつり健在

 

 しれっと、ものすごい功績だな………笑

 名前決めるときに「きじキジ」案を持ってきたのも、石山くんだったと思うな。

 石山先輩、とりあえず真っ先にお話伺いたいっすね笑

 彼はどうしてるんだっけな………そうとう優秀な子だったって聞いてるけど。

 当時の記事の登場回数を見ても、かなりエネルギッシュですよねえ。

 

 

 最後に、きじキジ10周年に寄せてひとことお願いします。

 そうだねえ。どんなコメントが欲しい?笑

 笑笑笑笑

 活動にオリジナリティ独自性があれば、それでいいんだという話はすごく響きました。

 やっぱりね、創刊からずっと見てると、きじキジのカラーが見えてくるんだよね。

その点でホッとしてるのは、10年後でも真ん中の部分が変質していないこと。きじキジの芯になるカラーは失われてないなと感じるんです。

だから僕は、記事読むときいつもニコニコしてます笑

 ひたすら嬉しいお言葉です………!

 「先輩たちはこういうオモシロを追究したんだな」って理解しながら「じゃあ自分ならどうするか?」を考えることができる。そういう部員が途切れずに10年やってこれてるって考えると………自分らのことながら、改めてすごいことですね。

 



(↑タップして読む↑)

 

 やっぱり、きじキジは「誰かの話を聞いて、それを発信する」ってのがミソだよね。

今って、情報なんかが一番それだけど、快なものはどんどん入れて不快なものを切り捨てちゃうじゃん。

 できちゃいますよね〜、たまに怖くなります。

 いろんな人と関わってやりとりするのって、責任とかハードルを伴うことだけど、それでこそ得るものがある。

仲間と一緒に楽しみながらやっていけるっていうのは、幸せなことだと思うよ。

おおいにエンジョイしてください!

 ありがとうございました!

 

 


取材協力 メディア社会学科 小田原敏 教授

取材・執筆 社会学科3年田中、メディア社会学科4年佐藤
撮影:経営学科2年越水

PAGE TOP